フロリダでディズニー社、LGTB議論が原因で特権はく奪、年に少なくとも数十億円の損失へ

 ディズニーワールドがあるフロリダで、およそ「ディズニー」のイメージとはかけ離れた問題から、ディズニー社は進歩派と保守派のサンドバッグ状態だ。

 話が複雑なので、前提から書きます。もろもろ、間違っていたら後日加筆します。

 

・カリフォルニアのディズニーランドで成功したウォルト・ディズニーは、ディズニーランド周辺に無数に乱立したこばんざめビジネスの存在を悔しがり、フロリダではこれらの周辺にこぼれ落ちるビジネスを全部、逃がすまいと超巨大な土地を押さえた。

 

・1967年、フロリダ州はこの広大な土地を「リーディー・クリーク特別地区」と指定、ディズニー社への税金を別枠扱いの上、建物の建築やテーマパークの開発等の際の州等へのすり合わせを不要とし、いわば「地方自治体」に準じる地区とした。

 

・保守的なフロリダ州はアメリカに昨今、強まる同性愛・LGTBを前向きに受け入れる風潮に反発、これらの教育を低学年児童には禁止する法案「教育における親の権利法」、通称「ゲイと言ってはいけない法」の制定を試みた。進歩派から反対が出て大議論となった。

 

・ディズニー社は当初、口出しをせず静観するという立場だった。しかし従業員から同性愛・LGTBを前向きに受け入れるという立場を会社として明らかにせよという要求が出て、ディズニー社は婉曲な表現だが同性愛・LGTB支持を明らかにした。

 

・これに怒ったのはフロリダ州の主流派である共和党、中でもデサンティス州知事で、いわばディズニーに対する懲罰として出したのが、「リーディー・クリーク特別地区」の消滅だ。

 10年前の試算ではこの特別扱いの消滅により損失は年数十億円とされているが、こんな額で済むわけがない。

 

・話がややこしいのは、ディズニー社はフロリダ州の共和党の大スポンサーであり、デサンティス州知事の「ディズニー社いじめ」という立場は共和党内では少数派であることだ。

 

・ディズニー社は時代の変化に合わせて自社も変化し適合させようとしている。しかしどうもこの「適合:がスムーズでない事が多くみられる。

 

 まあ頑張ってください。

 

(過去のブログ)

 「オリエンタルランド」という社名を名付けたのは船橋ヘルスセンターの丹澤善利氏

 

 

<2022.4.23追記>

 

 続報を読むとこの問題はおそろしく奥が深かった。

 

 ディズニー社関連でも、今後はディズニーワールド内の「新アトラクション」の建設では地元の行政とのすり合わせが必要になり、これはディズニー・イマジニアリングの開発チームの奔放なイマジネーションを大きく削ぐだろう。

 また「ミッキー・マウス」の著作権だが、アメリカの著作権期限はまるでミッキー・マウスの寿命を延ばすかのように延長されてきていたが、

この延長を繰り返すべきではないとの主張も出ている。

 この場合、ディズニーのライセンス商売はもちろん、ディズニーのキャラクター全体の価値が暴落する。

 

 フロリダ州知事だが、今回のディズニー問題以前から非常に保守的政策を繰り返している。

 「LGTB」を前向きに受け入れるのに反発する層が、アメリカには底堅く存在している。

 また特定の大企業が「一線を越えて」政治に影響を及ぼすことを非常に嫌う層も存在している。

 

 

 <2022.4.21記>

ディズニー:フロリダで「同性愛の教育問題」に深入りから反感が起こる 

(WSJE 2022.4.15・金) 

 保守的風土のフロリダ州での「教育への親の権利」法、通称「ゲイだとは言うな」法に関して、3月には「立場を示さない」としていた。従業員に対してこの法案に関して「(当社は)政治的なサンドバッグにはなりたくない」と説明したが、今はもろにサンドバッグ状態だ。バイデン大統領は同法案をLTGBの人間にとって有害だとしている。

 

ディズニー:おとぎ話とファンタジーの国が現実の世界に直面 

(NYT 2022.4.17・日) 

 ディズニー社は人種問題等の議論含みの文化の問題に自分から踏み込むようになった。昨年は「紳士淑女・男子女子」を「全ての年代の夢みる人達」とした。ディズニーワールドがあるフロリダ州での同性愛に関する教育への議論についても同様だ。ディズニー社は同州で自治体並みの特別扱いを受けているのだがこれに影響しそうだ。

 

ディズニー:フロリダ州知事、同社に与えてきた税金の特別扱いの廃止へ 

(WSJE 2022.4.19・金)

 4つのテーマパークやホテル群等を含む40平方マイル(東京23区の6分の1)は「リーディ・クリーク改良地区」とされディズニー社が自治体並みの権限を1967年から委任されて来た。ディズニー社が同性愛教育法について反対をしている事から、フロリダ州のデサンティス知事はこの特権を2023年1月で消滅させたいとしている。

 

ディズニー:フロリダ州の上院、同社への特別税金地区の廃止法案が通過 

(WSJE 2022.4.20・水)

 共和党が主導のフロリダ州の上院はディズニー社へ50年間与えてきた特別税金地区を消滅させる法案を通し、下院も通過する見込みだ。「リーディ・クリーク地区」内では建物の新築やパークの拡もほぼ自由に出来た。地区消滅後はオレンジ郡とオシオラ郡に編入されるが、同郡内で新たな「特別税金地区」が設けられる可能性がある。

 

 <2022.4.23追記>

ディズニー:フロリダ州知事、ディズニーの特別地区の終了の方向へ 

(WSJE 2022.4.21・木) 

 騒動は共和党内のポピュリスト的、反企業的なムードが特に文化的な問題で高まっている事を示している。ディズニーに対する特別地区での特別扱いはもう止めて、他のテーマパークと同じ扱いにすべきだとの意見がある。

 

ディズニー:税金の特別的な地位を失う方向へ 

(NYT 2022.4.21・木) 

 ディズニー社はフロリダでは思う物を得る事が出来ていたが、その時代は終った。デサンティス州知事はディズニー社はフロリダを支配できると思い、私にさえも同社のアジェンダへの指示するよう攻撃したとしている。

 

ディズニー:大企業が州政府と対立している他の例 

(NYT 2022.4.21・木) 

 フロリダ州知事のデサンティス氏は2024年の大統領選への出馬を狙っている。今回の様に地元の大企業が州政府と対立した例には、ジョージア州のvsデルタ、テキサス州vsシティグループがある。

 

ディズニー:フロリダ州知事、ディズニーの特別課税地位のはく奪法に署名 

(WSJE 2022.4.22・金) 

 約半世紀前、ウォルト・ディズニーはフロリダでの開発に当り自分たちへの大きな裁量権を求め、フロリダ州は「リーディ・クリーク」を設けた。これが廃止されると、地元の二つの郡には財政的に大きな負担が発生する。

 

ディズニー:フロリダ州知事はなぜこんなにもディズニーに怒っているのか 

(BBC 2022.4.22・金)

 デサンティス州知事が怒った相手はディズニー社が初めてではない。以前は数学の教科書が教室で使うには相応しくないとし、これは単なる「検閲だ」との批判も出た。15週以降はいかなる妊娠中絶も禁止した。

 

 <2022.4.26追記>

ディズニー:「特別地区」であった事でディズニー社が得ていた大きな権限 

(WSJE 2022.4.25・月)

 リーディ・クリークと同様な「特別地区」は全米では3.9万地区以上ある。1934年のニューディール政策の一つで灌漑や排水等の多岐な目的で作られた。しかし財務的に問題な場合も多く、ムーディーズの調べでは1980年以降に格付けされ、かつその後デフォルトに至った地方債の内で80%が特別地区が発行した物だった。

 

ディズニー:デサンティス州知事は大企業とぶつかるつもりであると示唆 

(NYT 2022.4.22・金) 

 長年、どの大企業にと親しい関係を続けてきた共和党だが、今後はどこと親しさを続けるか選びそうだ。以前ならフロリダの政治家がディズニー社と対立しようとする事など、考えられなかった。デサンティス州知事は自分の政策に合わない所へは州の権限により罰するというシンプルさで、これは脅迫状に似ているとの指摘もある。

 

ディズニー:どのようにしてフロリダで「自社の政府」を切り出したか 

(WSJE 2022.4.23・土) 

 ディズニー兄弟は1963年にフロリダで次のパークの候補地を選んだ。マイアミのヘリウエル弁護士から開発の迅速化の為の「特別受益地区」とロビーイングの仕方を教わり、1967年、「リーディ・クリーク改良法」が成立、ディズニー社は部分的に地方政府の様な自治権を得るに至った。開発はこの疑似地方政府の手続きで行われた。

 

ディズニー:カリフォルニア州知事、ディズニー社は二枚舌だとする 

(WSJE 2022.4.24・日) 

 ディズニー社は昨年夏に2000人分の業務をカリフォルニア州からフロリダ州へ移転させる理由としてフロリダ州は企業に対して友好的だからとした。カリフォルニア州のニューソム知事はフロリダ州の現状から「一体どこが友好的なのだ」とした。しかしヒューレット・パッカード、オラクル等、カリフォルニア州を去る企業は多い。