森トラストの大型ビル買収が不調な商業不動産市場の潮目を変える可能性

 アメリカの商業不動産向けローンが今年と来年、巨額の返済期を迎える等、今までの「問題の先送り」はとうとうタイムリミットが近いという見方がある。

 

 反対に、ビル市場の底入れが近いとの見方も出ている。森トラストがSLグリーンから購入した大型ビルがその大きな根拠だ。これはビルの全体評価を20$(2880億円)としその49.9%分が売買された。グランド・セントラル駅に隣接し、久々のトロフィービル売買だ。

 

(森トラのビル買収関係は末尾)

 

 ブラックストーンとブルックフィールドという二大巨頭が、ローンがノンリコースである事を武器にレンダーと融資条件の組み替え交渉をしている。ノンリコース・ローンであるので理屈上は可能な交渉なのだろうが、次回の借入れの際の支障にならないのか不思議だ。

 

 世界の「商業不動産価格指数」は2022年年初比で28%下落、その主因は金利上昇だ。最も下落しているのはヨーロッパで次いでアメリカだ。アメリカの問題化した商業不動産は640$(7.2兆円)で、うちモール等が230$(3.3兆円)、ビルが180$(2.6兆円)である。

 

 オフィス復帰をさせたい経営者側と抵抗する従業員側の対立は、「月曜日の出社」を義務付けるか否かが当面の焦点だ。火・水・木での出社を義務付ける事はほぼ合意が出来ている。

 

 新型肺炎以降、閉鎖が続いていたニューヨークの二つの著名ホテル、フォーシーズンズとプラザホテルが共にもめ事が決着し、再開の方向だ。

 

ホテルのコネクティングルームが大家族等の宿泊先として人気が出ている。「コネクティングルーム」とは「隣接する二つの部屋に内部で行き来できるドアがある部屋の事だ。普段はこのドアは閉じられ両方とも独立した通常の部屋とされ、宿泊者もそうとは気づかない。

 

 アメリカの住宅市場は依然として中古物件の新規のリスティング件数が少ない為、購入希望者は買いたいと思えば確実に買える新築住宅に流れている。

 

 中国の不動産危機は過去に何回か「もうアウト」とされたが、「今度こそアウト」との話がまた出た。今回のアウトの理由は、デフォルトした世茂集団の超大型プロジェクトの競売で、値引いた価格にも拘らず応札者が1社もなかった事だ。サッカー場34面分の広さがある。

 

 ほんの少し前までは中国でも有数の健全デベと見られていた大連万達だが、子会社の上場承認が得られなかった事に続き、今度は新規のボンドの発行が中止となり、既発のボンドの価格も急落、重大な局面にある。

 

 上海や武漢で年初から売りのリスティング数が激増、住宅問題は新たな局面入りした。

 

 習近平が言う「共同富裕」の実態が「富裕層を取り締まる事」にあるのを見て、中国の富裕層の間で世界最大規模のエクソダス(大脱出)が起きている。注目すべきはシンガポールで中国系のファミリーオフィス(一族の資産を運用する会社)の設立が急増している事だ。

 

 ロンドンで急激にオフィス開発が進んだカナリーウォーフ地区で、テナント群の中心である金融機関がどんどん退出し、シティやウエストエンド地区へ流れている。

 

 大陸ヨーロッパでは中核国の仏・独・スウェーデンで不動産市場が大きく悪化しているが、周辺国のであるスペイン・ギリシャ・ポーランド・スイスの不動産市場は賑わっている。中東のドバイはさらに賑わっており、とうとう2.04$(294億円)という住宅が売りに出た。

 

(森トラのビル買収関係)

ビル:森トラ、SLグリーンから大型ビルを20$(2880億円)の評価で購入

(ブルームバーグ 2023.6.26・月)

 森トラストが245パークアベニュービル全体を20$(2880億円)として評価し、その49.9%分をSLグリーンから取得した。SLグリーンはこのビルを昨年購入、改装を計画している。同社は今年に入り約20$(2880億円)分を売却し借入金を減らす。「クォリティが高くアメニティも備わったビルには強い需要がある」としている。

 

ビル:森トラの大型買収で見る「危機を心配し過ぎていた可能性?」 

(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2023.6.30・土)

 森トラストがグランドセントラル駅に隣接するビルの半分をSLグリーンから評価額20$(2880億円)で購入、追加投資も予定している。これは1989年にロックフェラーセンターを三菱地所が購入し6年後にモーゲージのデフォルトをした日本勢の無謀な買収話を思い起こさせる。しかしトロフィービルの売買は枯渇していた中で「取引が発生した」という事自体、ポジティブな話だ。更に悪材料を全て取り込んだ上での価格の可能性がある。

 

ビル:空室を抱えたビルが時限爆弾となっている 

(ブルームバーグ 2023.6.23・金)

商業不動産の危機が見え始めているがこの問題は数年は続く筈だ。巨額の返済期が今年と来年に来る。機関投資家の投資対象になるようなビルでも評価額は27%下落、世界各地でも13-25%の下落だ。賃貸マンションは21%、モールは18%下落している。「価格のグレイト・リセット」には10年を要すると見る向きもある。ニューヨークでは「古い築年のリノベ物件」よりも「新築」のハドソンヤードやグランド・セントラルの方が選ばれている。

 

ビル:ブルックフィールドがレンダー群とローン再編の協議を開始へ 

(ブルームバーグ 2023.7.1・土)

 ブルックフィールドはブルックリンのビルの返済満期日前のローン1.3$(187億円)についてレンダーと再編協議を開始する。ビルは6.3万㎡(1.9万坪)。ローンを特別サービサー入りさせ、ビルの運営や賃貸は同社が引き続き行う。ブルックフィールドはワシントンやロサンジェルスのビル群で既にデフォルトを起こしている。

 

オフィス復帰:とうとう「やけっぱち」の段階へ 

(ニューヨークタイムズ 2023.6.20・火)

 会社が従業員にオフィス復帰を強く求める例が増加しているが、セールスフォースは「ある10日間についてオフィスに出社した社員への相当分として、一日10$(1440)の慈善寄附をするとした。(:社員は出社しさえすればこの慈善目的の寄付に貢献できるが、出社しない場合は慈善行為への協力さえしない人間という事になる)

 

オフィス復帰:シティがオフィス復帰要請に逆らう人間へ警告信号 

(ブルームバーグ 2023.6.23・金)

 

 従業員に対して強くオフィス復帰を求めて来たシティグループは、「オフィス復帰をしない人間は成績査定を厳しくする準備ができた」とした。最低週3日以上の出社を求め、従業員の出勤状況をカードのスワイプ等で追跡し、この情報を上級エグゼクティブだけがシェアすると同時に、管理職は掲示板で閲覧可能とする。