恒大集団、預金2460億円が簿外債務でおさえられ、投資家は震撼

 恒大集団で開示されていなかった債務20$(2460億円)について基幹的子会社の預金が差し押さえられた。恒大集団の「本当の債務額」についての疑念が、同社社債への海外投資家の間で高まっている。同社の負債3000$(36.9兆円)のうち海外分は200$(2.5兆円)

 

 中国のデベのドル建てジャンク債(ハイイールド債)利回りが26%と一段と高くなっている。個別のドル建て債の半分以上が、価格は50%以下となっている。恒大集団で見られたのと同様なような簿外負債がないか、各デベについて投資家は怯えている。

 

 中国の住宅価格は当局の70大中都市価格指数が横ばいなのに対し、各デベの月次ファイリングは14-40%の下落と大きく食い違っている。原因は、前者では市場がまだ強いメガ都市他の大都市が多く含まれ、後者にはティア3、ティア4といった中小都市も多い事など。

 

(中国デベの問題:末尾、参照)

 

 ヨーロッパで物流倉庫の大型ディールが集中した。最大規模はブラックストーンの「マイルウェイ」をプロロジスが210億€(2.86兆円)で買うという話。シンガポールのGLPは倉庫投資向けに12億€(1630億円)を調達予定、スペインのメカラックスはIPOを予定している。

 

 ソフトバンクの悪い話がますます増えた。IT株全般の大幅下落で株価が年で60%下落、保有するアリババ、クーパン、ペイトム、オヨ(IPO予定額)が大きく下落している。LTVは同社が守るとしている上限に近づき、まだ非上場のアーム株も担保にして借り入れをした。

 

 ウクライナ危機の世界の不動産市場への影響はオリガルヒ所有の住宅とモスクワの欧米系ホテルとドバイに出たが、今後、影響は広がりそうだ。オリガルヒの住宅は圧倒的にロンドン、次にニューヨークにある。アコーやハイアットはモスクワから撤退する。オリガルヒの資産ではロンドンの豪邸が目立つが、スーパーヨットとジェット機も注目されている。

 

 プーチンへ近いか否かに拘らず、ロシア人の富裕層がドバイに集まり家探しをしている。ドバイはビザが緩くコスモポリタン的雰囲気がある。昨年住宅市場が劇的に改善した。

 

 ファンド大手のブラックストーンがマンハッタンで大幅な増床を伴う移転を検討している。マンハッタンで賃借床を増やしているのは圧倒的にIT大手だが、一部の金融機関も賃借床を増やしている。ブラックストーンは現在賃借中のビルでの借り増しも選択肢か。

 

 大手デパートへ活動家株主が企業分割を要求する場合、Eコマース部門を分離して上場益を株主に還元を要求する場合と、店舗用不動産を外出しにして含み益の還元を要求する場合で、後者はリースバックが前提だ。前者では分離したIT会社株に非常に高い価格が付く。

 

 住宅統計の数字の読み方が難しくなっている。既存住宅市場ではリスティングされた在庫が非常に少なくなり、「価格は上昇しているが売買件数は増えない」という状況、新築住宅市場ではサプライチェーン問題や労働力不足で「ビルダーの受注手控え」が起きている。

 

 住宅売買における「高額な住宅」の比重が大きくなっている。100$(1.23億円)以上の住宅取引の比率は2年前の4.8%から現在は8.2%へ増加した。カリフォルニア州は100$(1.23億円)以上の比率が特に多く、比率上位10都市中で7都市がカリフォルニア州だ。

 

 Fed0.25%の利上げを実施、30年物固定モーゲージ金利は4%を超えた。ノンバンクのモーゲージ融資会社は収益を借り替え融資に大きく頼っていたが、今後、苦しくなる。

 

(以下、中国のデベの問題)

 

中国デベ:恒大集団で銀行が20$(2460億円)分を突然、差し押さえ 

(WSJE 2022.3.22・火)

 恒大集団の基幹的子会社について、銀行群が突然20$(2460億円)を差し押さえ同社は別の手立てにより資金調達を図っているが、中国のデベに関する不確実性がまた増加した。恒大集団は2月時点でプロジェクトの80%で建設工事を再開し、建設会社の70%は工事の継続に同意している。

 

中国デベ:恒大集団で隠されていた「穴」は大きくなり続けている 

(WSJE 2022.3.22・火)

 恒大集団については、一体、本当の借金額は幾らなのかという疑念がますます強くなっている。隠れ債務問題は恒大集団の本体だけに留まっているのではなかった。恒大集団は20$(2460億円)強のキャッシュを上場子会社に分けて持たせていたという。オフショアの出資者達は自分たちが蚊帳の外なのではとの疑念を持っている。

 

中国デベ:ジャンク債の利回りの高さは限界点に達する (FTE 2022.3.11・金)

 S&Pは龍光集団を3ノッチ下げてCCC―とした。同社のドル建て債は12月の95¢から13¢へ下落、これは中国のデベがどう見られているかも表している。デベのドル建てジャンク債利回りが26%に達し、これらの半分以上は50¢以下だ。市場は簿外負債がないかと怯え、現にデベが頼る信託ローンも負債として開示されていない。

 

中国デベ:海外の債券市場が中国のデベを締め出す 

(FTE 2022.3.27・日)

 中国の不動産デベの新発のドル建て債は2021年第1四半期は30本あったが、今年は年初から僅か2本しかない。新発用も借り替え用も発行できず、既発債利回りは32.9%と前回の最高値である2008年の世界金融危機時の32%並みだ。会社内容に拘らずどこも売られている。恒大集団のドル建て債は額面1$に対して13¢だ。

 

中国デベ・監査:恒大集団、決算発表の期限に間に合わないと発表 

(BB 2022.3.21・月)

 恒大集団は2021年の決算公表が331日のデッドラインに間に合わないとした。新型肺炎が広まり監査作業の遅れている為。85%の減益予定の融創中国や世茂集団も決算発表期日に間に合わないとしている。

 

中国デベ・監査:監査の遅延で、決算発表が遅れるデベ達 

(BB 2022.3.23・水)

 中国のデベの間で決算発表を期限日以降とする所が相次いでいる。昨年下半期に「隠れ債務問題」が露呈し、当局も従前の監査を再検討している。PwCは先週、あるデベについて銀行預金等について透明性が得られないので監査人を辞任するとしたが、昨年12月以降、大手のデベ5社で監査を辞任する例が出ている。

 

中国デベ・監査:デベから相次ぐ監査事務所の辞任 

(WSJE 2022.3.29・火)

 簿外債務の存在が相次ぎ中国のデベでは監査業務の辞任が続いている。PwCはデベ4社と傘下の不動産管理会社2社の監査業務を辞任し、恒大集団、広州R&F、融創中国は監査付きの決算公表が期日に間に合わない。これらの辞任は「監査会社が以前に比べてやっと監査を真剣にやるようになったから」という見方もある。

 

中国デベ:苦境の中国デベから香港の大手デベがより取りみどりで取得 

(BB 2022.3.28・月)

 一時、中国のデベの香港進出が多かったが、今は香港のデベの中国での不動産取得が活発化している。恒大集団は世茂集団ほか多くのデベが資金繰り難で、香港のデベにとってはより取り見取りの状態で商業不動産も買う見込みだ。新世界発展が香港・広東省を含む大湾区地域で3物件を取得する他、太古地産、恒隆地産も積極的だ。

 

中国デベ:恒大集団が杭州の事業の持ち分を5.75$(706億円)で売却 

(FTE  2022.3.29・月)

 

 恒大集団は杭州のクリスタル・シティ(水晶城)の持ち分を、浙江リアルエステートグループと国営の不動産会社の2社に、36.6億元(706億円)で売却した。同社は建設途上の商業不動産でも現金化が可能だとしている。