「カバナ」というのは、元々は簡素なあずまやの事で、4本の柱の上に屋根を葺いて壁はないか、あっても布を垂らしただけという作りでした。日陰を得られて風通しもよいのでビーチで多く見られ、これがプールサイドにも持ち込まれました。
カバナの発展形として当初は更衣室が付く程度だったのですが、シャワーや冷蔵庫、さらにエアコンやテレビ、ソファーにミニキッチン等を備えるものが増え、今では二階建てカバナも登場しています。グループで借り切ってプールサイドの「基地」とするには絶好です。
ホテルの部屋から廊下を通らずにプールへそのまま出られるタイプの部屋も「カバナ」と呼ばれています。一般にホテルのカバナ・タイプの部屋の室料は高めです。
問題はプールサイドのカバナです。アメリカで一部のリゾートホテルが「カバナの貸し切り」が非常に儲かる事に気が付きました。あまりにも儲かるからでしょう、空撮写真を見るとプールサイド全体をカバナで埋め尽くしているホテルまであります。
一日貸し切りの利用料は、大体400$-700$(5.3-9.2万円)です。高い例では1,200$(15.8万円)、祝日絡みの日は2,500$(33.0万円)としたホテルもあります。下手をするとホテルの室料よりカバナの貸し切り料の方が高いわけです。それでもカバナ人気はうなぎ登りで、値段について、去年は一昨年より15%から50%も値上げされています。メイン・ダイニングと同じ程度の売り上げをカバナで稼ぎだすホテルもあり、額で見てもばかになりません。
ホテル宿泊者以外の外部の人が一日利用券を購入することも多く、こういった利用者はホテルの宿泊者よりもカバナでの料理や飲み物への支出が大きい傾向があります。Airbnbでこのような一日利用券を買えるホテルもあります。利用例としては、男性や女性の独身最後のパーティとか、中・高年の節目となる年齢の誕生祝い等、これらは確かに「プールサイドのカバナ」が適しています。パーティを一日中、のんびり・だらだらと楽しめます。
ある方の利用例を見てみましょう。彼は自分の50才の誕生日をラスベガスの大型ホテルの750$(9.9万円)のカバナで過ごしました。今は7月にラスベガスの別のホテルの550$(7.3万円)のカバナを予約しています。「カバナの値段が法外に高い事は確かだが、日よけが無ければラスベガスでは焦げ死ぬ」との事です。
ホテルにとってカバナの新設や追加のコストは安く、手間も簡単で工期も短いはずです。今年の夏は「カバナ・ラッシュ」になるのではないでしょうか。余りにも簡単に設置できるので、あっと言う間に供給過剰になってしまいそうな気もします。
余談ですが、アメリカでは最近「チップ」の相場が上昇しました。一部のホテルではカバナの利用料に自動的に25%のチップをチャージしています。
($=132円 2023年4月7日近辺のレート)
ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清
三井不動産リアルティ㈱発行
REALTY-news Vol.96 4月 2023年 掲載