ブラックストーンが不動産ファンドのBREITで償還を制限し、波紋

 ブラックストーンの大型不動産投資ファンド・BREITが出資者からの引き出しを制限し、大きな波紋を呼んでいる。BRIETは個人投資家も機関投資家並みの不動産投資手法が可能として急成長、今は同社の稼ぎ頭だ。上場はしていない「非取引不動産ファンド」である。

 

 BREITは四半期ごとに償還請求の上限額を設定していて、今回はその限度に達して引き出し制限となった。この春からアジア勢の償還請求が大きく増えているのだが、原因は不明。上場リート株指数が年初から2割下げていたのに対してBREITはほぼ横ばいだった。

 

 ブラックストーンはカナダの物流不動産の購入やラスベガスのカジノ&ホテルの売却等、以前として不動産売買が活発だ。しかし同社の不動産ビジネスにもゆらぎが生じる可能性がある。BREITには問題が無いように見え、それなのに起きた今回の事態は要注意である。

BREIT関係記事は末尾)

 

 ニューヨークのビル群、特に築年が古い小型のBCクラスの物からテナントが抜け「ビルのゾンビ・エリア」となる可能性がある。テナントは新築のビルしか求めていない。今回のリストラは大手ITは勿論、ウォルマート他でもホワイトカラーが対象という点が特異だ。

 

 中古のビルを賃貸マンションへコンバージョンする動きが目立つ。コンバージョンはどのビルでも可能そうに見えるが、実際は様々な法令や技術的な問題のクリアが必要。

 

 ブラックフライデイ(1125日・金)は新型肺炎による中断で、久々の本格的な物となった。小売り各社は在庫過多で11月の初めからディスカウント・セールを開始、ブラックフライデイでは「開店前にドアで押し合い目玉商品を奪い合う」という昔の風景はなかった。

 

 レジャー旅行に比べて遅れていたビジネス出張だが、やっと回復したと思われていた矢先に景気後退懸念による経費節減の動きが出て、回復の伸びが鈍化してしまった。

 

 住宅市場では売り手も買い手も姿を消し、価格は微落のまま取引件数が大きく減少している。状況は2007年サブプライム危機の後よりも、1980年代初めの急激な利上げ時に似ている。今回の価格調整は短期的な物では終わらず、長期化する可能性がある。

 

 機関投資家が家主の「戸建て住宅レンタル」は現在、各種の不動産ビジネスの中で最も伸びている。人気の原因の一つは、「戸建て住宅は価格が高騰、またモーゲージの金利が高い為」に賃貸へ移っている人が多い事。新築戸建の11%が戸建住宅レンタル用とされている。

 

 ソフトバンクの孫CEOは同社のファンドが投資する時に同氏個人分も抱き合わせで投資、その際に自分のお金は出さずファンドに立て替えさせていた。その後、これらの投資は大きく目減りし、孫CEOはファンドに47$(6400億円)の借金を負っている形となった。

 

 習近平批判が公然と出ているが、これが「ミドルクラス」にも広がっている事は脅威だ。中国政府は国民の様々な不平不満を個別に分断する「分断統治」で抑え込んできた。しかし新型肺炎での不手際やウルムチでの火災の惨事がSNSを通して、一挙に不満が「共有」された。

 

 中国当局が住宅危機問題への対処とした諸事項が、デベの新株発行などで動き始めている。一方、最大の問題である恒大集団の債務リストラ計画は12月中に発表予定だ。

 

 ロンドン市場の時価総額がパリ市場に抜かれ、イギリスの落日を印象付けた。

 

 クレディスイスは株価の下落が続きどうなるかが非常に懸念されていたが、結局、当初予定よりはかなり低い発行価格になったが株主割当増資は成功し、同行は一難去った模様だ。

 

***ジャパン・トランスナショナル***

http://www.japan-transnational.com/

 

BREIT関係)

ブラックストーン・BREIT:償還請求が上限に達して、償還締め切りに 

(ブルームバーグ 2022.12.2・金)

 ブラックストーンは690$(8.2兆円)という不動産の巨艦ファンド、BREITの償還請求が膨らんで四半期ごとの償還額の上限に達しそうな事から、償還を一時停止した。四半期の償還上限は純資産の5%だが、償還の停止は不動産業にとって嫌な兆候である。BREITが稼ぎ頭であるブラックストーンの株価は10%下落した。

ブラックストーン・BREIT:出口を求める投資家が殺到 

(フィナンシャルタイムズ電子版 2022.12.2・金)

 ブラックストーンはBREIT宛の償還請求の43%にしか応じられなかったとした。富裕個人投資家層がリスクを感じていた。償還請求の70%がアジアからで、BREITへの非アメリカ人による出資が20%に過ぎない事を考えると非常に大きな数字だ。ファンド等は「富裕個人層は年金やSWFと似た市場で分散投資すべき」してきた。

ブラックストーン・BREITBREITで起きた問題は不動産セクターへの警告 

(ブルームバーグ 2022.12.3・土)

 アメリカの不動産業界の痛みが増している。個人富裕層向けのBREIT投資家の引き出し額を制限するとし、住宅ローン融資最大手のウエスファーゴでは木曜に同部門の数百人のリストラを発表した。BREITはクラス1への出資に年率13%のリターンを出し、他のローリスク商品が低利回りしか出せない中で魅力的だった。

ブラックストーン・BREIT:スパイラルに陥る可能性はほぼ無い 

(ブルームバーグ 2022.12.2・金)

 償還制限を出したBREITだが流動性のミスマッチのスパイラルに落ち込む事はないだろう。BREITは自分の意思でクローズドなファンドに変更可能なので、SNSは騒ぎ過ぎだ。さらにBREITは多額の流動性を保有している。しかしBREITが健全に見えるのに今回のような事態が起きた事には、注意をしておく必要がある。

ブラックストーン・BREIT:償還請求の制限に陥った原因は? 

(フィナンシャルタイムズ電子版 2022.12.2・金)

 BREITからの引き出しはアジアから多かったがアジア市場に別状はない。BREITの資産の55%は賃貸住宅、23%は物流倉庫だ。BREITのクラス1は横ばいだが、「賃貸住宅REIT」と「物流REIT」は年初から25%下げている。現物の賃貸マンションは10-20%価格下落したとされているが、長期的には楽観的に見て良い。

ブラックストーン:商業不動産ファンドへの引き出しで不動産全般に圧力 

(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2022.12.6・火)

 二大非取引不動産ファンドのブラックストーンとスターウッドがともに引き出しを制限、イギリスにも同じ動きがある。リート指数は年初から2割下げて銀行は商業不動産融資に後ろ向き、買い手が躊躇してビル売買は減少した。2020年と異なり個人投資家も換金を急いでいる。鑑定価格は後追いとなりがちだが市場は先読みする。

ブラックストーン:不動産への投資にゆらぎが生じている 

(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2022.12.5・月)

 BREIT55%が賃貸住宅で23%が物流施設だ。「BREIT」の今年の実績は+9%だが、「上場リート」は平均△28%だ。BREITの出口の利回りは5.4%、昨年末は4.8%だった。賃貸マンション用融資の利回りは現在8%、物流施設向けは6.44%で、不動産価格の下落が見込まれている。住宅の新規賃料と既存賃料の差が縮まっている。

ブラックストーン:BREITに続く「債券投資ファンド」とは 

(フィナンシャルタイムズ電子版:2022.12.7・火)

 BREITに似た仕組みで企業の債券に投資する仕組みがブラックストーンの「BCRED(ブラックストーン・プライベート・クレジット・ファンド)」だ。この2月で開始から一年が経ったBREITやスターウッドの不動産ファンドでは引き出し制限で問題となっているが、これとは異なりBCREDは殆どが変動金利債権に投資されている。