マンハッタンでは「アメニティ・リッチ」なオフィスビルに人気が集まる

 新型コロナ問題が終息しつつあるマンハッタンで、オフィスビルの好・不調が顕著に分かれています。マンハッタン全体としては空室率が増加傾向である中、超高層・超大型の新築ビルや本格的にリノベされたビルは非常に順調に埋まっています。しかし築年が古くて規模も小さいビルでは、どんどん空室が増えている状態です。

 

 新築やリノベのビルが好調な原因はいくつかありますが、最近、よく指摘される点としてこれらの大型ビルが「アメニティ・リッチだ」という話があります。

 

 「アメニティ」というのは日本語にしづらい言葉です。例えばホテルの室内ならば、宿泊客を心地よくさせる物のすべてが室内のアメニティです。壁にかかった絵もクッションもランプも全部アメニティなのですが、日本ではそれらの中の一部である「持ち帰りがOKなシャンプーや石鹸、化粧品等」だけをアメニティと呼んでいます。

 

 オフィスにおけるアメニティを、具体的な例で見てみましょう。あるビルではワンフロア全体を「アメニティ用のフロア」としていて、フィットネスジム、打ち合わせ室、カフェ、ラウンジ、バスケットコートがありました。フィットネスジム内のバイクはペロトン製の高機能バイクです。打ち合わせ室は簡単にヨガルームに変えることができます。

 

 その他の例としてはヨガと似た運動をするピラティス用の個室やキックボクシングのサンドバッグがありました。いずれもパーソナル・トレーナーの指導を受けられます。

 

 最近は会社が無料の朝食・ランチを提供する例が増えています。これもアメニティです。

 企業の直近の最大の悩みの一つが、新型コロナも落ち着いてきてそろそろ「在宅勤務」を縮小、従業員たちにもっとオフィスへ出社して欲しいというものです。なかなか復帰率が上がらず、さきの「無料の朝食・ランチ」にはこれで釣ろうという思惑もあります。「オフィスに来ればエアコンの電気代はかからない」と説得している会社もあります。

 

 フィットネスジムにも似た面があります。「ジムに自腹で行くくらいなら会社でやればタダだ」というのです。こういうアメニティは大型のビルほど設置がしやすいのは明らかです。

 

 「アメニティ」という言葉は高級マンションでも使われます。倉庫でもアメニティが重視されるようになっています。最近の倉庫は返品処理も行う場合があり人手が必要で、求人や雇用の定着を図るため、カフェやラウンジ、バスケットコート等が設置されています。

 

 「アメニティ」は例外的に大規模開発では外側にも効用が漏れ出すことがあります。最近の例ではハドソンヤード開発で設けられた公園内の高さ46mのベッセルがその例です。ベッセルは開発のシンボルでもある独特な形の建築物で「階段と展望台を兼ねた踊り場だけ」でできています。「ハチの巣」と形容する人もいますが、工事費はなんと2億ドル(292億円)です。

(1ドル=146円 2022年10月11日近辺のレート)

                     ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY-news Vol.90  10月 2022年 掲載