中国のローン返済拒否、銀行懸念と社会の不満で当局が緊急・絆創膏

 中国で「モーゲージ返済拒否」の動きが急速に広がった。キャッシュが尽きたデベがマンション工事を停止、図面売りの購入者は「竣工しそうにないのにモーゲージ返済を続ける事はできない」とした。SNSのプラットフォームでの呼びかけで、燎原の火の如く拡大した。

 

 末尾参照:中国の当局が行っている対応の記事

 別ブログ参照:中流層の不満の累積が及ぶ習近平氏を襲う懸念

 

 モーゲージ返済拒否が全国で230プロジェクトと大きく拡大した為、当局はSNS上でのこれらを検閲や削除を実施、現在、動きがどの程度広がっているのか掴めない。下請け業者や部資材業者は「工事費をもらっておらず銀行融資の返済は出来ない」と言い始めている。

 

 これは一歩間違えると「ピラミッド全体が崩れる」事になりかねないが、当局は依然として「絆創膏」で手当て中だ。銀行が当局の求めに従いデベに工事再開の資金を融資すればその分、銀行の不良債権は増えてしまう。融資をしないとモーゲージの返済ボイコットに会う。

 

 このような中、恒大集団のリストラの話は不透明のままだ。当初は工事が停止した問題のマンションは同社だけの話だったのが、もたもたしているうちに他社でも多くの工事停止となったプロジェクトが発覚、問題化している状態だ。

 

 世界でここは「おかしい/あぶない」とされているのは、ソフトバンクとクレディスイスだ。ソフトバンクは保有株の評価下落が著しい。新規投資を絞った為、報酬を手にできず人材が次々に退社している。クレディスイスは独立を保てるか、大手の傘下となるかの境目だ。

 

 マンハッタンの主要駅、ペンシルバニア駅(ペン駅)とその周辺の10本の超高層ビルからなる再開発計画が、実質的に承認された。オフィスビル・リート大手のボルナドが駅周辺に不動産を大量に所有し、10本のビルのうち5本を同社が所有または部分所有する。

 

「オフィス復帰」はアメリカで現在、よく議論されるテーマだがこれは10大都市以上に限られた議論で、アメリカの大部分を占める中規模以下の都市では従業員はとっくに「オフィス復帰」をしている。「在宅勤務派」には景気後退による採用停止やレイオフも逆風だ。

 

 アメリカの住宅市場では「冷え始めの兆候」が出ている。「売買市場」が先行、次に「賃貸市場」で出た。冷え初めの兆候は値上がりが激しかった都市で出ている。しかし全般的にはまだ上昇傾向にあり、マンハッタンの家賃は前年比でまだ大きな上昇が続いている。

 

 商業不動産の中では賃貸マンションと倉庫が特に好調だったが、上半期は勢いが衰えている。クロージング・ベースで見ると上半期は好調に見えるが、契約入りしたのは数か月前なのだ。5月から6月にかけて、賃貸マンションの価格は4%、倉庫は6%下落した模様。

 

 マイアミが活気を帯びている。ニューヨークのオフィスビルのデベが大型ビルの建設に向っている他、シカゴから本社を移すファンド大手のシタデルはマイアミの他にパームビーチでもオフィスを構える。

 

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

http://www.japan-transnational.com/

 

 

(参考記事)当局の対応部分だけを掲載

モーゲージ危機当局:返済ボイコットによる不良債権は大きくない? 

(ブルームバーグ 2022.7.15・金)

 モーゲージ支払いボイコットに伴う不良債権の額を中国の各銀行が明かにした。額で最大の農業銀行が6.6億元(871億円)、工商銀行は6.37億元(841億円))等で、建設銀行、中国銀行、交通銀行は額を明示しなかった。

モーゲージ危機当局:返済ボイコットの広まり状況が検閲により削除される

(ブルームバーグ 2022.7.15・金)

 全国的な広がりを見せているローン返済のボイコット数等の共有ファイルを運営しているプラットフォームに対して、これらの数字をフォローする事が禁止された。この共有ファイルは工事遅延によりモーゲージ支払いを止めようとする人間にとっての主戦場であり、また世界の投資家や銀行群の貴重な情報源だった。

モーゲージ危機当局:デベへの融資を促してボイコットの芽を摘もうとする

(ブルームバーグ 2022.7.18・月)

 モーゲージ返済ボイコットの広がりに対して当局は迅速に反応、銀行群にデベ向け融資の増加を指導した、先週7.7%下落した銀行株は1.7%上昇と、9営業日連続の下落から反発した。デベ株は3.6%上昇した。最悪のシナリオはこの問題が金融危機につながる事だが、当局は巨大な国有銀行群の力を用いて封じ込めに成功しそうだ。

モーゲージ危機当局:中国の当局、銀行群を招集して緊急ミーティング 

(ブルームバーグ 2022.7.19・木)

 銀行株とデベの社債の下落で金融当局は緊急会合を開いた。当局は「不良債権額が増加しても融資を緩める事」と「社会の安定」のジレンマにある。デベの危機は碧桂園の様に安全とされていたデベにまで広がり、新しい段階に入った。デベ群が2013-20年の間に竣工前販売した物件で引き渡しがされているのは60%しかない。

モーゲージ危機当局:モーゲージの支払いの「猶予期間」を検討

(ブルームバーグ 2022.7.18・月)

 当局は工事が停止しているマンションのモーゲージ返済が止まっても、これが「信用スコア」に影響を与えないようにする方向。問題となっているプロジェクト数は金曜(7/15)時点で80都市の230プロジェクト以上だ。政府によるデベへの融資規制から問題が始まった。これに加えて河南省では同国史上最大の銀行詐欺が起きている。

モーゲージ危機当局:返済ボイコットという反乱を抑えようと模索 

(ウォールストリート・ジャーナル電子版 2022.7.18・月)

当局はSNSを監視し、銀行にデベ向け融資を指示している。300プロジェ、クトでボイコットが発生しているがこれには恒大集団や佳兆業のようにドル建て債でデフォルトした会社も含まれている。問題となるモーゲージの総額は1500-3700$(48.8兆円)で比率的には大きくはない。中国ではモーゲージの事故率は極端に低い。

モーゲージ危機当局:河南省、返済ボイコットに対処するファンドを設立 

(ブルームバーグ 2022.7.20・水)

  河南省は政府系デベと合弁で不動産セクターの救済用のファンド、「河南資産管理」を設立して資金難に陥ったデベを救済し、ローン返済ボイコット問題に対処する。重慶や寧波も同様な検討に入っている。河南省のファンドでは短期債での資金調達がうまく行っていない。同省では月初に「銀行詐欺」が発覚、預金者の怒りを買った。