筑駒(教駒)で私が受けた授業はこんなだった:『数学―2』

 受験勉強や受験指導的な事を何もしてくれない先生だらけの中で、唯一それらしい事をしてくれたのは三年生の時の数学の先生だった。

 使った教材は「問題集」なのだが、たてよこ厚さとも小さな本だった。末尾には解答と三行程度のヒントしかない。

 

 先生はこの問題集の問題を順番に、たんたんと解いて見せた。私は先生の職人技とも言える見事さ、鮮やかさに感嘆した。これは多くのクラスメートに共通した感想だったと思う。

 我々が解くとどうしても10行か20行くらいになるであろう所を、先生は4行か5行で整然と回答としてしまうのだった。この華麗さは衝撃的ですらあった。

例えば、下手に微分をするとだらだらと項が長く続いてしまうが、少し組み替えてから微分をすると短く綺麗な式になる。

 受験用の数学って、意外と美しいものなんだなと感心した。

 

 

 先生は一時間の授業で毎回4問ずつくらい、解いていった。このスピード感も驚異的だった。