筑駒(教駒)で私が受けた授業はこんなだった:『生物』

 生物は高校一年生の時はDNAの塩基の分析、二年生の時はショウジョウバエの遺伝子地図の作成で、両方ともほぼ一年をかけ、いずれも実験が主体だった。

 

 クロマトグラフィーにかけるDNAはハツカネズミの肝臓をすりつぶして得るとの事だった。20匹くらいの小さいハツカネズミ達がケージに入れられ、自分たちの運命も知らずに飛び跳ねていた。私は自分には生物関係の進路は向いていないと悟った。

 残酷な場面は先生がされたのだろう、我々は見る事はなかった。肝臓はすりつぶされて溶液に混ざった状態で我々に渡され、それを遠心分隔機にかけてぐるぐる回した。沈殿したDNAに割りばしのような棒を差し込み、太い糸のようになってDNAが絡み合った物を巻き上げ。クロマトグラフィーにかけて、DNAの塩基のうち「CG」「AT」の量が等しい事を確認した。DNAが二重らせん構造であるためだった。

 

 ショウジョウバエの実験の方は思い出せない部分が多い。

 3つの遺伝的形質として、「羽の長短」、「目の色」と「もう一つ」があった。ショウジョウバエの遺伝子は円形であり、上の3つの遺伝的形質を決める遺伝子の部分が、たがいにどのような位置関係にあるかを割り出す事が実験の目的だった。

 決定する遺伝子の距離がたがいに離れていればいるほどその間にあるいろいろな遺伝子の部分は長くなって遺伝子が置き換えられやすくなり、従って突然変異が起きる可能性が高くなる。たくさんのショウジョウバエを交配させて発生する突然変異の頻度を調べ、「羽の長短」「目の色」「もう一つ」の各遺伝子の位置関係を決めた。

 

 驚くべきことは、この二つの授業を私が受けたのは前者が「1969年」という事だ。ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造を発表した1953年から僅か16年しかたっていない時に、高校の授業でこのような実験をしていたのだ。

 

 先生方がいかに「ナマ」な学問で我々をインスパイアしようとしたか、その困難さと有難さを思うと頭が下がる。