ハワイアン航空のフラストレーションがたまっていたパイロット

 ハワイには太平洋艦隊というアメリカ海軍の巨大な基地があるが、そのパイロットの有力な再就職先がハワイアン航空なのだそうだ。ハワイの島々を結ぶローカル・エアラインだが、最近は本土に乗り入れる路線もある。

 

 かなり前の話だが、マウイ島にある中規模なモールがポートフォリオの中の一つとして売りに出た。当方の本命は別の超大型物件でありこちらを買う気は全くなかったのだが、一応、担当として日帰りで見ておくことにした。この時に、ハワイアン航空に乗った。

 

 離陸時から様子が違っていた。普通、飛行機が離陸する時は滑走路の端っこで向きを整えていったん完全に静止して、それからエンジンをふかすものだと思っていた。ところが私が乗った飛行機は静止しないどころか、滑走路に対してまだ斜めである状態のうちにブワーっとエンジンをふかし始め、左に曲がりながらどんどん加速して離陸した。自動車で言えば若者が左カーブを曲がり切らないうちにアクセルをふかすようなものだ。

 

 飛行機が着陸する時はかなり手前から滑走路に対して直進するコースに入り、徐々に高度を下げて着地するものだと思っていた。ところがマウイ島で着陸態勢に入るというアナウンスが流れた時、右下・斜めの方向に滑走路が見える。どう見ても着陸に向かう方角ではないのだ。しばらくすると機体が大きく右に傾き、まるでマンガの戦闘機のように弧を描いてぴたっと着陸した。

 

 この日は朝、ホテルで寝坊し、日本で駅の中を走るのと同じ様にホノルル空港のターミナルビルの中を搭乗口まで走る羽目になっていた。しかし飛行場は駅よりはるかに巨大で、またマウイ島の搭乗口は一番奥だったのではないかと思うのだが、走れども走れども「Maui」という矢印ばかりが現れるのだった。

 やっとたどり着いたのだが、なんとボーディング・ブリッジがなくて飛行機がつながっていない。階段を駆け下り、数十m先にいる飛行機に向かって「扉が閉まらないように」と祈りながら最後のダッシュとなった。

 ところが私の前方を黒い鞄を持ち、制服に帽子という人が悠然と歩いている。追いついて「マウイ島行きのパイロットさんですか?」と聞くとそうだとの事、彼がいなければ飛行機が飛べるはずがないので、そこからは一緒にゆっくりと歩くことができた。(飛行機はこのような時に一生懸命走らなくても、列車とは違いドアを開けて待っていてくれる事はあとで知った。)

 

 この時に話をした感じではこのパイロットはどう見ても優しそうな普通の中年のおじさんだったのだが、戦闘機と比べると普通の旅客機の操縦なぞ馬鹿らしいという気持ちは分からないでもない。

 

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