昨年、ニューヨークの住宅は売買・賃貸ともに復活し、絶好調だった

 ニューヨークの住宅市場は、2021年は目覚ましい復活を遂げた。400$(4.6億円)以上のラグジュアリーな住宅の売買件数は1877件と、2006年以来で最大だ。最高価格の取引は220セントラルパーク・サウス内の1.575$(182.7億円)だった。

一方、一般の住宅も過熱していたが、外周部で年後半で人気が若干冷えている。

 

 アメリカ全体では、住宅市場は「上昇」と「下落」の報が交錯していて、踊り場にある模様だ。

 

 マンハッタンで大型取引、大型開発の話が相次いでいる。

 ・ブラックストーンがハドソンヤーで評価額28.5$(3310億円)のビルの49%分を購入。

 ・RXRリアルティがグランド・セントラル駅隣接で進めている大型ビルの工事が進む。

 ・アップルが大型リースをしたファーレイビルのリノベが進み、内部が公開された。

 ・シルバースタインが金融地区で大型中古マンション建物を24.8$(2880億円)で購入。

 ・マクロウ・プロパティーズが金融地区でオフィスビルを購入してコンバージョンする。

  

  (以上について、末尾に付記) 

 

 シカゴでも超高層ビルの支配持ち分が、全体評価額10$(1160億円)で売買された。

 

 ニューヨークでは昨年暮れからオミクロン株の蔓延で、年明け以降、オフィス復帰が急速に怪しくなっている。

 

 アメリカの観光業の完全復活は2024年になるとの見方がある。現在、復活済みなのはビーチと山岳地帯のリゾートでフロリダやカリブ海沿岸は好調だ。一方、都市型の観光業やホテルはまだだめで、サンフランシスコやニューヨークは復活から遠い。ハワイは新型肺炎前から旅行者数の多さを問題としてきたが、宿泊税を導入する方向だ。

 

 4年前に倒産したトイザらスの復活第一号である大型店の開店がクリスマスに間に合った。注目のニュージャージーの超メガモール、「アメリカン・ドリーム」内だ。トイザらスはメイシーズと組んで、デパート内にショップ・イン・ショップ、400店を開く計画だ。

 

 またソフトバンクに悪い話が相次いだ。親しかったクレディスイスから訴訟を起こされ、中国の滴滴出行株の値下がりで69$(8000億円)の含み損となり、イギリスの健康・美容のTHGの子会社株のオプション取得16$(1860億円)でも巨額損の状態だ。

 

 恒大集団は昨年暮れに建築工事の再開を宣言、一部で派手な竣工式を開いたが、年明けに海南省のプロジェクトで建築許可が違法に取得されたとして、地元政府から39棟を10日以内に取り壊すように命じられ、業界全体に波紋が広がっている。今後どうなるか不明。

 

 中国の建設業界で働く移民工は5200万人だが、21日からの旧正月での帰郷に充てられる賃金が未払いのままだと、都市部で大変な社会混乱が起きる可能性がある。恒大集団ほかのデベは移民工への賃金支払いを最優先の一つとしている。


 ウォルマートが新疆ウイグルの問題で中国政府から締め付けられている。過去にはカルフール、尖閣問題、H&M、ロッテで同様な問題が起きた。中国は消費が伸びず、「市場としての魅力」が薄れていて、このような市場に拘るべきか根本的な疑問が起きている。

 

 シンガポールの住宅市場が一段と過熱している。昨年上半期の売買額はマンハッタンでの2倍だ。政府は沈静化を狙って、スタンプ税率をさらに追加的に引き上げた。家賃も上昇し、海外駐在員は悲鳴を上げている。

 

 ロンドンの住宅市場では大ロンドン市の外周にあるベッドタウンや、さらにその外側で活発だった。しかしその後、イギリス各所の都市では現在はオフィス復帰の流れから都市部のマンションの人気が高まっている。

 

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付記:ニューヨークの大型売買・開発関係)

ビル:ブラックストーン、マンハッタンで評価額28.5$(3310億円)で買収

(ウォールストリート・ジャーナル電子 2021.12.17・金)

 ブラックストーンはブルックフィールドからハドソンヤード地区所在のビル、ワン・マンハッタン・ウエストの49%分を全体評価額28.5$(3310億円)で購入する。稼働率は90%でスレートやアクセンチュア他が入居中だ。同ビルやワン・バンダービルトの様なトロフィービルは眺望、アメニティ、換気の点からテナントにも人気。

 

ビル:グランド・セントラル駅に隣接する超高層ビルが動き出す 

(ブルームバーグ 2021.12.22・水)

 グランド・セントラル駅の隣接地でRXRリアルティとTFコーナーストーンが進めている高さ1575フィート(480m)の大型ビルの姿が見えてきた。仇名は「175パークアベニュー」でイースト・マンハッタンの再生計画のリゾーニングで実現した。周辺にはJPモルガンの本社予定ビル、ワン・バンダービルト、シタデルの計画がある。

 

ビル:ファーレイビルに見る、フェイスブックのオフィスへのベット 

(ブルームバーグ 2021.12.28・火)

 ニューヨークのオフィス市場は沈滞気味の中、メタ(旧フェイスブック)は昨年大型リースした「ファーレイ・ビル(1912年築)」と入居済みの「ハドソンヤード」を公開した。ファーレイ・ビルでは自然光が差し込む大きな窓の近くでデスクがクラスターに配置されていた。ハドソンヤードではカフェとイベントスペースが目立っていた。

 

ニューヨーク:シルバースタイン、コンバージョンされた物件を取得 

(ブルームバーグ 2021.12.23・木)

 シルバースタインは金融地区で4166戸からなるアパートメントを2.48$(287億円)で購入した。1931年築で35階建て、オフィスからコンバージョンされた建物だ。シルバースタインが住宅用の中古物件に投資するのは初めて。取得するもう一つはフォーシーズンズが入いている開発済みの新築物件。両方とも同社の「地元」だ。

 

ニューヨーク:市内で最大となるコンドのコンバージョンがダウンタウンで 

(ブルームバーグ 2021.12.18・土)

 ニューヨーク証券取引所から1ブロックの所で、オフィスビルがコンバージョンされ、565戸のラグジュアリー・マンション「ワン・ウォール・ストリート」となる。オフィス街の金融地区の住民が増える。デベは432パーク・アベニューを行なったマックロウ・プロパティーズで、元はバンク・オブ・ニューヨーク・メロンの本社だった。

 

ニューヨーク:ハワード・ヒュー、開発規模を縮小し市から開発承認を得る 

(ブルームバーグ 2021.12.29・水)

 

 マンハッタンのシーポート地区の1ブロックで、ハワード・ヒューは「マンション270+小売+オフィスの26階建て」開発の承認を得、市と土地の長期リースを結んだ。原案では470フィート(143)のオフィス他を予定していたが反対活動に会い規模を縮小した。同社以前に幾つもの計画が反対で潰されていた曰く付きの土地だ。