マイアミの北、サーフサイドのマンション倒壊と「区分所有法」への示唆

 まるでマンガのような出来事だったが、簡単に整理しておこう。

 

 マンションが所在するサーフサイドは白人が特に多い。倒壊したのは1981年竣工・136戸の「南棟」のうちの約55戸だ。1982年に「北棟」が竣工、1994年に「東棟」が竣工している。再現ビデオを見ると南棟は構造が3つに独立していてまず中央部分が崩落、6秒後に画面右部分が崩落、画面左部分は倒壊を免れている。

 昔は引退者と避寒用の別荘的利用者が多かったが今は通年の居住者も多い。事故当時、いったい誰が建物内にいたのかが確定できず、救出作業上の問題になった。

 

 肝心の倒壊の原因について現時点で言われている事を列挙すると、海風の塩分がクラックから入り鉄筋を腐食させた、鉄筋の量が指定より少なかった、設計段階でミスがあった、ビルの基礎から水が逃げないようになっていた、プールの下のコンクリート面他にクラックが多かった、駐車場のデッキ下部の鉄骨量が不足していた等が指摘されている。40年ごとの行政による「再確認制度」もあり、また居住者や所有者たちの組合は構造に問題がある事を察知していたが、間に合わなかったわけだ。

 

 参考になるかは不明だが、隣接地で販売中のマンションの最高価格は1000万$(11.2億円)だ。本倒壊事件によるマイアミの中古マンション相場への影響はまだ報じられていないが、築年の古いマンションについて大幅な値引きを交渉する買い手が出ている。「(アメリカ全土の)マンションはすべて時限爆弾だ」と極端な事を言う人もいる。アメリカでは7400万人がマンションに住んでいるのだ。

 今後は建築技術上の問題、管理上の問題を中心とした議論となる。特に後者は「そもそもマンションの所有形態とはどうあるべきか」という悩ましい問題につながる。 

 

 これは日本の「区分所有法」が抱える問題と共通しているので、参考になるだろう。

 

 日本の「区分所有法」は法律の制定当時から誤算があった。そもそも「マンション(英語では一戸建ての超豪邸の事だ)」という言葉から分かるように、これは一等地、お屋敷町で戸数がせいぜい10戸から30戸くらいで外観が超豪勢に見える建物を開発・分譲する事を想定した法律で、買う人間も富裕層を想定していたとしか思えない。

 

 したがって、「建物は所有者の皆さんにお任せしますのでご相談してください。皆さんはお金持ちですので行政は関与しません。」というのが法律の作りになっている。ところが非常に使い勝手の良い法律だったので、今では1棟で1000戸規模の物まで出現する住宅形態になった。「庶民」に金持ちのマネをしろと言ってもそれは無理だ。

 

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