世界最大の借金デベ・恒大集団と、デフォルト慣れしてきた中国

 恒大集団と中国の債務問題が同時並行で悪化している。ただし両方とも、過去に以前から「悪化」と言われてきた。経済的に貧しい地方の政府系ビークルの社債利回りが上昇している。中国では国有企業の倒産も起き、恒大集団も「大きすぎて潰せない」はあたらなくなった。

 (末尾の2021.7.20「恒大集団:株価急落」の追記へ)

 (末尾の2021.7.21「恒大集団:株価i一段と急落」の追記へ) 

 (末尾の2021.7.23「恒大集団:ぶれる株価と終末論」の追記へ)

 (末尾の2021.7.26「恒大集団:香港の大手銀行群、マンションのモーゲージを停止」の追記へ )

 (末尾の2021.7.24「恒大集団:香港通貨庁が香港の銀行をけん制」の追記へ) 

 (末尾の2021.7.28「恒大集団:株価の回復を狙った特別配当は中止」の追記へ) 

 (末尾の2021.7.31「恒大集団:この一週間は揺れに揺れた」の追記へ) 

 (末尾の2021.7.31「恒大集団:また資産凍結され株価が急落」の追記へ)・「追記」は今回で終了  

 

関連ブログ:恒大集団:中国政府による処分方法が道半ばまで見える

 

      恒大集団、香港上場親会社とCEOを生贄にして国内金融秩序の維持を図る方向?

 

 ソフトバンクの重要な取引先であるクレディスイスは、金融会社グリーンシルの破綻に関連してソフトバンクとの取引を切る方向だ。保険が切れていたとする東京海上に対してもクレディスイスは保険金支払い請求をするが、この件でのソフトバンクの関与は不明。

 

 ビジネス出張はまだ低調だが、レジャー旅行はかなり復活をした。Airbnbを筆頭とする民泊が大人気で、これらの会社は新規のホストの獲得に力を入れている。Airbnbの中もでも人気なのは、ビーチや国立公園、あるいは鄙びた田舎に所在する物件だ。

 

 アメリカではホテル、レストラン等で人手が集まらない。政府の給付金がそこそこの額であり低賃金では働こうとはしない面や、リモートワーク・ハイブリッドと言った議論は所詮はホワイトカラーの議論で、株や住宅価格の上昇で潤ったのも彼らだという意識がある。

 

 米銀の間でオフィス復帰へのスタンスが割れている。モルガンスタンレー、ゴールドマンサックス、JPモルガンはかなり強硬なオフィス復帰派だ。一方、シティはハイブリッド勤務導入の予定で、もしかするとシティは一人負けする可能性がある。

 

 ビザの一つであるEB-5はアメリカで雇用を生む投資をした外国人に与えるグリーンカードで不動産開発と親和性が高く、ハドソンヤードでも活用され、デベにとって低利な資金調達方法としなってきた。しかし制度廃止か、延長かで議論が起きている。

 

 実店舗の売上が急増しているにもかかわらず、モール100施設を擁するSCリートのワシントン・プライムが破綻した。アンカーテナントのJCペニー等の破綻が痛かった。

 

 「世界同時多発型・住宅バブルではないか」との懸念がある。最もバブルがかっている国はニュージーランド、カナダ、スウェーデンで、イギリスとアメリカがこれに次ぐ。

 

 ブラックストーンが再度、戸建て住宅レンタルの分野に大型投資を重ねている。今回は1.7万戸を保有している戸建て住宅レンタル会社を60億$(6720億円)で買収した。この会社はテナントに「賃貸する住宅の購入オプション」を付与していた事で有名だ。

 

 住宅価格が上昇している中で賃貸家賃相場は下落をしていた。しかしニューヨークではメディアン家賃の下落がまだ続く中、コンセッションが明らかに減っている。家賃相場の底打ちが近い可能性が高い。

 

 AIの不動産ビジネスへ「エージェントへの支援AI」として進出する例がが目立つ。クラウドとデータ解析により(人間の)エージェントをパワーアップする。しかし多くの不動産会社で「AIを利用」としているのは、実際は単なる宣伝文句というシニカルな見方もある。

 

 欠陥問題が取りざたされているマンハッタンの超高層・超高額マンションの432パークアベニューの96階部分が、購入価格の倍の1.70億$(190億円)で売りに出そうだ。

 

 ロンドンはブレグジットで懸念されたが、ヨーロッパの金融のハブの座を維持している。

 

 イギリスの小売店家賃は3か月分を一括前払いするが、この前払い家賃収受率が3月は21%だったが、6月では18%へと下落し、家主会社に重くのしかかっている。

 

***ジャパン・トランスナショナル 坪田 清***

    http://www.japan-transnational.com/

 

(2021.7.20「恒大集団:株価急落」の追記)

 <<恒大集団:裁判所による銀行預金の凍結で株価が急落>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.19・月)

 江蘇省の裁判所が恒大集団の預金1.32億人民元(22.3億円)を凍結した事から、恒大集団の株価は月曜日に16%の急落をした。裁判所に凍結を求めたのは広発銀行で、預金凍結の話は週末に広まった。同社は過去に何回も危ないとされた。ドル建て債でも巨額の借り入れをしていて、政府がどの程度の支援に入るかが注目されている。

<<恒大集団:今まで何回も情報が外れた事にマヒしている投資家への警告>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.19・月)

 超低金利の時代に、恒大集団の2025年物8.75%の社債価格は62.6¢で、これは年25%と中国のデベのドル建てジャンク債の中でも最も高い。政府によるデベに対する融資制限で、同社はノンバンクからの信託ローンが総負債の40%もあり、ますます高い金利の資金調達に追い込まれている。今年のデフォルトの4割は国営企業だ。

<<恒大集団:皆が狙っている258億$(2.8兆円)の現金>>

 (ブルームバーグ 2021.7.20・火)

 恒大集団の許家印会長はある時は香港の富豪達へのコネで、ある時は共産党100周年パーティへ登場する事で危機を乗り切ってきた。フリーキャッシュは258億$(2.8兆円)だが、2月には中国最大の工業団地デベの華夏幸福が数か月前の現金保有高を突然大きく切り下げて投資家を驚かせ、その後にデフォルトをした。

 

(2021.7.21「恒大集団:株価、一段と急落」の追記) 

<<恒大集団:2物件の販売の一時中止で株価や社債の下落が一段と深まる>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2020.7.20・火)

 恒大集団の湖北省の市が、マンション2物件について「事前販売したファンドが資金不足」であるとして月曜日に販売の中止を命令した事で、同社の株と社債は一段と売り込まれた。販売は火曜日に再開され、株価と社債価格も回復した。株価は月曜に16%下落し、火曜にはさらに10%下落した。同社は頭金が重要な資金繰りだ。

<<恒大集団:長らく言われていた超巨額借金の問題、とうとう審判の時か?>>

 (ウォールストリートジャーナル電子版 2020.7.20・火)

 恒大集団は長らく所謂「灰色のサイ」で何回も危機を乗り越えてきたが、今回はかなり難しい。社債の償還期は2022年3月まで来ないが、2000万$(22億円)の預金凍結で市場評価額が42億$(4620億円)も吹き飛んだ。3月末の有利子負債は1040億$(11.4兆円)だが、未払い費用の950億$(10.5兆円)などの勘定が増加している。

 

(2021.7.23「恒大集団:ぶれる株価と終末論」の追記)

<<恒大集団:社債に対して認められた担保評価は53%のディスカウント>>

 (ブルームバーグ 2021.7.21・水)

 ボンド担保で資金を融通しあうレポ市場で、恒大集団の2023年満期の元建て債の担保評価は53%のディスカウントとなった。4月には28%、昨年10月の危機時は57%のディスカウントだった。国内の格付け機関はAAAとしている。恒大集団は資産売却の準備も進めているが、大手国有銀行の中にはもう融資を絞っている所がある。 

<<恒大集団:銀行との対立が解消したとの事で株価が急騰>>

 (フィナンシャルタイムズ電子版 2021.7.22・木)

 恒大集団は湖北省での2つのマンション事業に関連して起きていた銀行との言い争いが解決したと発表、株価は木曜、9%上昇した。47¢に下落していた2025年満期の社債は51¢に回復した。同社株は年初比で46%下落している。先週金曜は特別配当を検討しているとの話で10%上昇、粗い値動きが続いている。 

<<恒大集団:終末の付け方はパートナーシップか各部門のIPOか叩き売り>>

 (ブルームバーグ 2021.7.23・金)

 許家印CEOは今回の危機は昨年、友人を頼って切り抜けた様にはいかない。過去に問題を起こした大企業の例には大連万達、HNA、安邦保険があるが、いずれも資産売却を行った。恒大集団については国営の金茂ホールディングや万科企業が検討しているとの話があるが、狙いは大湾区での保有資産とされている。

 

 (2021.7.26「恒大集団:香港の大手銀行群、マンションのモーゲージを停止」の追記 )

<<恒大集団:香港トップの銀行群がマンションへのモーゲージの提供を停止>>

 (ブルームバーグ 2021.7.21・水)

 香港の4つの大手銀行HSBC、中国銀行香港支店、ハンセン銀行、東アジア銀行が、恒大集団が建築中の2つのマンションへのモーゲージ融資を停止した。このような動きが協調するのは稀だ。恒大集団は他に幾つもの銀行と取引があり今回の話でも支障はないとしている。マンションは1棟が50%、もう1棟は97%、販売済み。 *記事のピックアップ漏れを回復した。

 

 (2021.7.24「恒大集団:香港通貨庁が香港の銀行をけん制」の追記)

<<恒大集団:銀行少なくとも2行がモーゲージ融資停止の姿勢を見直しか>>

 (ブルームバーグ 2021.7.23・金)

 香港のHSBCと中国銀行香港支店は恒大集団の未竣工物件へのモーゲージ融資を停止していたが、香港通貨庁から問い合わせがあり停止方針を見直そうとしている。ハンセン銀行と東アジア銀行も今週、恒大集団のマンションへのモーゲージ融資を停止している。恒大集団は現状の計画を変えず一物件は8月に、もう一物件は10月に引き渡すとしている。

 *(注)中国政府には「恒大集団を成り行き任せとはしない」との意向があって?、

    香港通貨庁の問い合わせはその意向を受けてなされたものか?

 

 (2021.7.24「恒大集団:株価の回復を狙った特別配当は中止」の追記) 

<<恒大集団:大型の特別配当を検討か>>

 (ブルームバーグ 2021.7.26・月)

 恒大集団の許家印CEOは株価を上げて信用回復を図る為に特別配当の実施を検討している模様だ。同社は2018年に特別配当を実施して株主に報いたが、2019-20年は利益が減少した。恒大集団は株式の77%を許CEO、8.9%を親密なポーカー仲間の富豪が所有しており、配当金は「リサイクル」される事になる。

<<恒大集団:特別配当は実施しないと、予想外の動きに出る>>

 (ブルームバーグ 2021.7.27・火)

 恒大集団は2週間弱前に役員会で議論した特別配当計画を取りやめた。許CEOは手元資金は十分にあるとしているがS&Pは月曜、同社にこの1ヶ月で3回目になる格下げをした。火曜朝の同社株は9.1%下落、年初からの下落幅は59%となった。同社には預金凍結、販売停止、モーゲージ融資等の問題が立て続けに起きている。

  

 (2021.7.31「恒大集団:この一週間は揺れに揺れた」の追記) 

<<恒大集団:スパイラルに拡大するデットの危機>>

 (ブルームバーグ 2021.7.28・水)

 許家印CEOを取り巻く状況は悪化の一途で、今や中国の金融で最大の懸念材料だ。許された時間があまりなく、社債の償還は来年3月に20億$(2200億円)、来年全体では74億$(8140億円)だ。許CEOが打てる手が尽きた時に政府がベイルアウトに入るかどうかが問題だ。冷たい態度に出る銀行群が増えている事も懸念される。

<<恒大集団:大騒ぎとなった一週間が終わり、同社の手元流動性へまた懸念>>

 (フィナンシャル・タイムズ電子版 2021.7.28・水)

 恒大集団は中国の都市化の波に乗って急拡大してきた訳だが、「金詰り危機」にある。単純に「手元にお金がない」状態なのだ。中国の「事前販売(注:日本で言う図面売り)」というビジネス・モデルに疑問が出され、非常に不安定で売れ行きが悪化すると逆回転にはまるのではと見られている。子会社売却等による資金調達は考えられる。

<<恒大集団:年初に同社株暴落を予言したアナリストがさらに40%下落と見込む>>

 (ブルームバーグ 2021.7.27・火)

 1月に「恒大集団株は半額以下になる」として的中させたUBSのアナリストが、目標株価を40%下げた。

 

 (末尾の2021.7.31「恒大集団:また資産凍結され株価が急落」の追記へ)

 <<恒大集団:また新たに資産凍結がされ、株価も社債も下落>>

 (BB 2021.7.30・金)

 恒大集団の国内上場の子会社が裁判所から3年間の資産凍結を命じられ、恒大集団株は9.2%急落して2017年1月以来の安値になった。当該子会社と武漢の国有建設会社の間で発生した問題で詳細は不明。恒大集団では広発銀行と2000万億$(22億円)の預金凍結、鉱山会社への200万元(3400万円)の未払いといった問題も起きた。

 **日本語のメディア多数報じられるようになったので、本件の「追記」は今回で終了します。  

 

 

「グローバル不動産経済研究会」資料会員募集 月額1万円(+)

 問い合わせ ジャパン・トランスナショナル f-ree@88.netyou.jp