「アメリカン・ドリーム」のデフォルトについてJPモルガン他が動く

 マンハッタンから至近のニュージャージー州メドウランドのアメリカン・ドリームはつくづく運がないプロジェクトだ。事業主はメガモールばかりを建てているカナダのトリプルファイブというゲルメジアン一家の会社だ。モール部分の面積は300万sqftで約8.4万坪、店舗とレストランが450店なので、たぶん「船橋のららぽーと」とか「越谷のイオン」の2倍か3倍くらいだろうか?

 

 昨年3月19日にグランド・オープンを予定していたが、直前にロックダウンが敷かれた。モール側から「閉鎖」と言い出すとテナントから休業補償の要求が出る可能性があり、一方で客はどうせ来ないので店としては自主的に閉じることも多い。従ってモールが開いているのか開いていないのか、よくわからない状態になる。

 

 今回問題となったのは、アメリカン・ドリームのコンストラクションローン12億$(1320億円)で、JPモルガン、ゴールドマン・サックス他の融資団が融資していた。家賃が十分に入るはずがなくデフォルトとなっていた。

 このローンの担保に入れられていたのはミネソタ州のモール・オブ・アメリカとカナダのメガモールだった。モール・オブ・アメリカ自体もデフォルト状態だったのだが、これはミネソタが警官による黒人のフロイド氏殺害に伴う暴動の発生場所であることからも悪化した。

 

 JPモルガンとゴールドマンサックスがアメリカン・ドリーム宛のコンストラクションローン融資団をとりまとめ、担保のモール・オブ・アメリカの持ち分を取得することとした。アメリカン・ドリームの方には、触らなかったわけだ。

 

 しかしこのアメリカン・ドリームはつくづく運のないプロジェクトだ。かかわる会社が次から次に不運に襲われ、2010年に今のトリプルファイブが事業を引き継いだ。

 メガモールと人工スキー場、テーマパーク、大型プールほか、このようなものにシナジーがあるとは思えない。おまけにフルオープンすると年間来場客数は4000万人を見込むというのだが、ニューヨーク市との間にはハドソン川があり、ピーク時にはこのような人数はこの川を渡れない。

 

 それにしても、JPモルガンやゴールドマンサックス、こんなバカでかいモールをもらったって、手に余るはずだ。将来、リートとかCMBSのネタにでもするのだろうか。

 

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