マンハッタンでの新規の住宅賃貸件数、1月は去年の倍に

 アメリカでワクチン接種が1月にシニアにも開始され、さっそくホテルやクルーズ船の予約をしている元気なシニアたちが登場しています。ホテル等は新型コロナで客が来ず大幅にディスカウントされた料金が設定されている上、ワクチン接種が広がる前の今ならまだどこでもすいています。

 

 住宅の方では、マンハッタンの新規の賃貸契約件数が急増しました。1月は前年比で94%増ですからほぼ倍です。というのも家賃が前年比で10数%から20%と大きく下落している上、フリーレントが2か月というのも珍しくなく、「借りるなら今だ」というわけです。

 

 「野心を持つ若者はニューヨークへ来る絶好のチャンスだ」と言う人もいます。「キャリアの形成段階」にある若者にはニューヨークが最高だという主張です。

 

 「キャリア形成」というのは例えば「ビルのプロ」になろうとするなら、「許認可」「建設」「リーシング」「管理」といった各分野の仕事を自分で能動的に選択して広く専門的な経験を積み、最終的にはビル会社のトップになることを目指します。

 

 今、問題となっているのは「アプレンティス(見習い)」や「ニューカマー(新入社員)」の教育です。彼らは「キャリア形成」の入り口にいるわけですが、在宅勤務ではどうも指導や教育がうまく進みません。どう解決するのかまだ見えていない課題です。

 

 アメリカでは在宅勤務的な働き方は新型コロナ以前から若干ながらありました。金融業界の経営層や管理職に多く、彼らの働き方は羨ましく思われていました。

 

 今回、在宅勤務がブームになった背景の一つはこの「羨ましさ」でしょう。マンハッタンから郊外に引っ越した人間は、当初は大きな家と庭で遊ぶ子供たちの姿に喜んでいました。ところがやがて「郊外の方が騒音がうるさい」ことに気がつきます。専門業者は大型の芝刈り機や落ち葉の吸い込み機を使うために非常に音が大きく、近所で一日中うなっているのです。まともなレストランもなく、ましてやシアターやミュージアムもありません。だんだんマンハッタンが懐かしくなります。

 

 さらにビジネスでも問題が表面化しています。金融マンが在宅勤務でマネーロンダリングや市場操作をする例が発覚しました。またネットでは個人へのフィッシング詐欺やなりすまし、アカウントの乗っ取り等が横行していますが、ビジネスへの波及が懸念されます。

 

 これらは在宅勤務を否定するものではありません。これだけ多くの人間が「在宅勤務の味」をしめると、世の中は変わるでしょう。一例としては、3月から郊外部からマンハッタンへの通勤用の相乗りヘリコプターが就航します。片道175$(約1.9万円)です。

 

                                                                           ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY-news Vol.70   3月 2021年 掲載