後書き・4 外側から見た方が分かりやすいことがある=地球儀のように・・

 世界の不動産ビジネスはある時はゆるく、ある時はきつく結びついている。私はこれを「グローバル不動産経済」と呼んでいる。

 

 2019年後半の世界の不動産業界で最大の話題はアメリカのWeWorkだった。同社にはサウジアラビアとアブダビ発のオイルマネーが混じった1兆円規模の資金がソフトバンクを経由して注ぎ込まれ、フォアグラのようになり、そして行き詰った。インドでもきわめて似た話が持ち上がっている。

 

 HNA(海航集団)や安邦保険ほかの中国の大手発の資金がアメリカやヨーロッパで投資されたのは2014-17年ころで、不動産も多数を取得した。小金持ちもオーストラリアやマレーシアで積極的に投資、一部は日本にも向かった。今はこれに逆回転がかかっている。

 

 各国中央銀行の中で最初に量的緩和に乗り出したのは日銀で、2001年のことだ。リーマンショックが2008年に起き、その後に世界各国の中央銀行が低金利政策や量的緩和を実施、マネーは瞬時に国境を飛び越え、不動産市場もグローバルにシンクロする傾向が強くなった。

 

 とは言っても、多くの実務家にとって日本の不動産市場は日本ローカルなものである。たまに身にふりかかるのは「グローバル不動産経済」の波しぶきのようなものだろう。

 ビジネスの現場でこの「波しぶき」をかぶる立場にいたとき、これを一過性の対処によってやり過ごすことは、不可能ではない。

 

 しかしこれを「波の外」、すなわち日本の外側に視点を置いて眺めれば、思わぬ風景が見えてくる。

 あたかも、地球儀を見る時のように、外側から見た方が分かりやすいことがあるのだ。

 

 三井不動産リアルティ株式会社ソリューション事業本部から毎月発刊するメルマガへの執筆のお話をいただいた時、以上のような問題意識で、私の知るところを書いてきた。それをこのような形でまとめていただいたのは、同社と株式会社読売広告社のおかげである。

 深く感謝したい。

 

  2019年12月 ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

 

(「世界から日本の不動産を知る」・2020年1月刊から)

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