後書き・2 規制そのものはアメリカの方がはるかに厳しい

単純に規制の厳しさだけを見れば、アメリカの方が日本より格段に厳しい。サブプライム・ローンの証券化から派生した問題で2014年にバンク・オブ・アメリカが当局と達した罰金和解の額はなんと166.5$(1.8兆円)だ。この和解の前後、アメリカとヨーロッパの大銀行は同様な問題で順繰りにやり玉にあげられ、各行とも数億$(数百億円)以上の罰金和解に追い込まれた。邦銀はローンの証券化事業では出遅れていたことが幸いし、難を逃れた。

 

 1995年に大和銀行のニューヨーク支店は現地行員が米国債取引を簿外で行い、約11$(1200億円)という巨額赤字を出した。連邦準備制度理事会への報告が遅れため、同行は当時としては巨額だった3.4$(370億円)の罰金を支払ったうえ、アメリカから締め出されるという厳しい処分を受けた。

 

 後に米銀大手のシティの日本法人が何度目かの不正を起こしたとき、金融庁内には同行を日本から締め出すべきだとの意見があったそうだ。シティの日本法人のアメリカ人社長が上手に金融庁に対処し、この問題はシティ本体のCEOが来日して当局に詫びを入れることで事なきをえたという。

 

 これには後日談だがある。格付け会社のS&P2011年にアメリカ国債の格付けをAAAから落とし、怒ったアメリカの財務省はS&Pに対して各種の問題(難癖)を提起、同社は非常に苦しい立場に追い込まれた。この時、スカウトされてS&Pの社長に就いたのが先のシティの日本法人社長である。彼は怒っている役所をなだめるエキスパートと評価されていたのだ。実際、その後、S&Pへの財務省の態度は大きく軟化した。

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