前書き・2 日本の新聞だけがオリンパスの疑惑を報じなかった

 (注:福島原子力発電所の爆発事故が発生した)その半年後の2011年10月15日(土)のフィナンシャルタイムズに奇妙な記事が出た。オリンパスの元社長のウッドフォード氏によれば、同社は海外の実体のない会社群に対して10億$(当時のレートで770億円)規模の巨額買収を実施して資金を消失、これには「ヤクザ」が絡んでいる模様だという。

 

 オリンパスのような世界的な有名企業でヤクザ(この言葉はビジネス英語になっている)がらみの超巨額の資金消失が起きているとなれば話題性満点であり、週明けから他の海外メディアも連日、大きく取り上げて追いかけるようになった。組織犯罪がらみの可能性ということで、アメリカのFBIも捜査に乗り出した。

 

 しかしこの時も日本語での報道は何もなかった。10日以上経っただろうか、突然、怒涛のような報道が日本語でも始まった。この間、世界中のビジネスマンが興味津々であったこの事件について、日本人だけが何も知らなかったのである。

 

 「10億$の資金消失」というのは、実は過去の財テクの失敗による損失を表面化させずに消そうとした努力だったことが後日、判明する。

 

 ウッドフォード社長はこの件を聞かされておらずメディアにより知ったのだが、「この問題にはヤクザが絡んでいる。手を出すな。」と警告されたという。「ヤクザ」の尾を踏んでしんまったとの恐怖から同氏はフィナンシャルタイムズに駆け込み、事実を公表することで身の安全を図ることにしたのだった。

 

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