世界の不動産投資資金の流れは、「端っこ」から見ていった方が分かりやすい。
南米には原油、銅、鉄鉱石他の資源の輸出国が多い。民間会社がこれを担っていて、資源の売却代金は母国には入れず国外で外貨のまま保有されている。したがって国にはお金がないのに、一部の民間人が外国で持つ資産の額は非常に大きい。
この地域発の不動産投資資金の行き先のほとんどはニューヨークと地理的に近いフロリダ州だ。まれにロンドンに向かうと話題になる。アジアには来ない。
次の「端っこ」はアフリカだ。アフリカでは南アフリカとナイジェリアに資金がある。
南アフリカはアフリカで広く資源の権益を保有、個人の金持ちが多い。不動産投資資金の行き先はロンドンで、ここからユーロ圏全域に散らばっている。
ナイジェリアはかなり前に大型の油田開発に成功し、政府直轄のファンドにより世界から注目を集めていた時期があった。しかし女子高生200数十人をまとめて誘拐して売り飛ばすイスラム教の分派がいるワイルドな国でもある。
ヨーロッパの「端っこ」である北欧地域ではスウェーデンが大国であり著名な世界企業も多い。しかし投資の世界では弟分のノルウェーの方が重要だ。「北海油田」を擁する大変な産油国だからだ。
この北海油田はイギリスも権益を持っているが、疲弊した経済の立て直しや老朽化したインフラの更新のためにこれを使い果たしてしまった。
一方、ノルウェーは豊富な水資源による発電で国内の電力需要をまかなえたので原油はすべて輸出に回し、代金は別段貯蓄とした。毎年、加わる輸出代金と貯金の投資利回りでべらぼうな額のファンドになり、その一部が日本に流れてきて表参道の商業ビルを買った。
最後の「端っこ」は中東だ。大国サウジはリーダーの皇太子が何人もの殺害を指令、パーティでは相手のスマホに悪さをしてプライバシーを抜き出していた事がばれ、今や危険人物扱いだ。天然ガスが豊富なアブダビが目立つようになっている。イギリスの不動産へ積極投資をしていたカタールやドバイは元気がなくなっている。
週刊住宅 2021年3月22日号掲載
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