ここからは世界の不動産投資資金の動きを見てみよう。私が「グローバル不動産経済」と呼んでいる分野だ。
非常に錯綜し匿名で資金が動く事も多く、また短期間で状況が急変する。正確な実態をタイムリーにつかむのは無理だと思われる。
まず不動産に関する世界の資金の「集散地」を抑えておこう。これは「国際金融センター」とも呼ばれている。
ニューヨークは南北アメリカでは勿論、世界の中でも飛びぬけて重要である。多くの資金がウォール街に集まってから各地に飛ぶ。
この意味で「集散地」である上、ニューヨークの不動産そのものも投資対象ともなっている「着地場所」でもある。
ロンドンはヨーロッパで最も重要で、その国際性・多様性はニューヨークを上回っているという面さえある。投資資金の「集散地」であり「着地場所」でもあるが、ブレグジットで金融都市としての地位が低下するとの懸念等から最近は「着地」がめっきり減っている。
問題はアジアだ。香港が従来は金融の「集散地」だった。しかし中国の強権的姿勢を嫌ってシンガポールに拠点を移す動きが加速している。各社は中国政府からにらまれないように目立たぬ形で移転を進めている。
香港、シンガポールはともに「着地場所」としてはあまり需要ではない。
このような中、東京はそこそこ重要な「国際金融センター」でトップリーグの一員ではあるが、厳しく言えば「地銀トップクラス」程度だ。
東京の特徴は、「東京発」の投資資金が大きい割に「東京着」の投資資金が少なく、また世界から東京に投資資金がいったん集まりそれがまた世界に飛び出すという「集散地」の機能もないことだ。
今後、新型コロナの問題で「東京着」、すなわち日本の不動産に投資する外資が増加するかもしれない。
中国政府は香港に代えて上海か深圳を新たな金融センターにする方針だと言われる。しかし「お金」というのは非常に憶病なものであり、強権的な国の都市が「国際金融センター」になるとは思えない。中国とその属国を相手にしたローカルな金融都市にとどまるだろう。
週刊住宅 2020年2月8日号掲載
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