海外の不動産に投資して合法的に節税する事は、一定の注意を払って行えば可能である。法人税や所得税なら「海外での赤字を日本の損益計算書に取り込めるような形で投資する」という事になる。
しかし海外での赤字により日本で節税するという行為は、日本政府とっては非常に問題がある。通常、利益を減らすとそれは未来へ先送りされるなり、取引の相手方に利益が移って先方の税金が増える。
これならば日本政府としては税収総額は変わらない。ところが相手方が海外の場合は増える税金は相手国の政府の税収となってしまう。この問題が端的に示されるのが「移転価格税」という税金で、ある先生はこれを日本の古代神話の「国引き」に例えていた。
節税スキームを複雑にしすぎる事は問題だ。タックスヘブン2か国をかませた事があるのだが、手間がかかり過ぎて他の業務に支障出た。GEの国際節税の複雑さは以前は「芸術的」とされていた。しかし不採算部門に手を入れると過去の節税で圧縮した利益に連鎖的に新たな課税が生じるためにリストラが遅れたのが、近年の業績悪化の遠因だと聞く。節税に励んで経営が悪化したのでは本末転倒だ。
頭を振り絞って節税スキームを組み立てても、税務調査で担当者が全く調べようとしない事があり、これにはがっくりくる。英語能力の問題なり徴税効率を重視しているのだろう。これは「節税スキーム」の枠外の話である。
最近よく見聞きするケースは「国内で黒字である日本人(日本法人)が、自ら海外の不動産を『直接取得』してその赤字を節税に用いる」という話だ。所得税や法人税の節税だが、この際の最も魅力的で簡単な赤字は減価償却だ。但し2022年の確定申告分から取り扱いが一部変更になる。相続税については手がけた事がなく、よく分からない。
現地法人を設立して『間接取得』した場合は、「海外での赤字を日本での節税に用いること」はできなくなる。日本側で発生するのは現地法人からの配当課税なり貸付金の利子課税が基本だ。
現地視察としての旅行のほか、個別の事情に応じていろいろな費用を付け替えたり、あるいは現地で放蕩の限りを尽くす人もいると聞くが、ほどほどにした方が良いだろう。
週刊住宅 2020年1月25日号掲載
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