本連載も残り六回となった。今回は「日本人が海外不動産投資をする際の注意点」を書きたい。いずれもほぼ私自身の実体験である。
投資先の国の選択の際、その国でどの程度「法律」が機能しているかは、「その国で弁護士業が職業として成立しているかどうか」でだいたい分かる。今時、どんな国でも法律はワンセットで揃っていて弁護士制度もある。しかし国によっては「法律」を地元の社会慣習と十分に整合させることなく、単に宗主国のものをなぞって制定しただけの場合がある。
従って例えば「相続人」が社会慣習上と法律上の規定とで異なる場合、誰を売買の当事者とするかが困難になる。仮に弁護士を連れて行ってもらちがあかないし、役所も「無理があるのは法律の方だ」と考えている。このような国では弁護士は「職業」として成り立たない。
資本が自由化されていない国では外貨(円)を持ち込む際に「登録」し、この「登録」があれば後に外貨による回収ができると規定されている。ところが慢性的な外貨不足の国では、現実問題として政府に金(外貨)がない。ないものは払えるはずがないのだが、政府としては金がないので払えないとは言えない。書類の不備等、いろいろな理由(難癖)を付けて「これでは払えない」とし、国庫に金(外貨)が溜まるまで待たされることになる。
対外債務が巨額でかつ年率100%というハイパーインフレが起きていたある国では、引き出しの申請から払い戻しを受けるまで非常に時間がかかった。この間のインフレにより、払い戻し時の為替レートは申請時の為替レートより大幅に減価してしまった。
為替レートの変動は先進国でも一種のバクチだ。ドルは大昔は360円の固定レートだったが今は100円強、この10年強を見ても120円から80円程度の間で変動している。
為替リスクへの対処の基本的な方法には、「ドル価格100の購入物件についてその家賃収入により返済出来る額である80のドル建て借り入れを行い、残りの20を円で持ち込む」というストラクチャーがある。これだと為替リスクに晒されるのは20で済む。
応用編はいくらでもあるが、最もオーソドックスなのがこのパターンだ。
ジャパン・トランスナショナル代表 坪田 清
週刊住宅 2020年1月11日号掲載
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