イギリスには住宅ローン融資専業のノンバンク大手が2社ある。ネイションワイドとハリファックスだ。アメリカでと同様、イギリスでも住宅ローンにおけるノンバンクの比重は日本よりはるかに大きい。
ネイションワイドとハリファックスは実行した融資のデータを毎月公表している。住宅統計は景気動向の判断の際に非常に重視され、両社の融資件数やメディアン価格の変化は重要な先行指標となっている。
アメリカにも多くの種類の住宅統計があり、金融政策や景気対策の決定の際に重要視される。住宅は個人消費の中核の一つだからだ。日本にはタイムリーかつ信頼できる住宅統計がなきに等しく、日銀はこの点では目隠しをして全力疾走しているようなものだ。
以前はアメリカでは銀行がローン融資の主体だったが、ここ5年で様相が変わりノンバンクの重要性が格段に増した。今年はノンバンクによる融資実行額の方が多くなる。
この状況の理解には、同国で独特の込み入った住宅金融システムの説明が必要となる。
アメリカの住宅金融システムで最も重要なのは政府系金融機関の「ファニーメイ」と「フレディマック」だ。両社は銀行やノンバンクから住宅ローン債権を買い取り十年物の固定金利の債券(MBS)に組み替えて市場で売る。機関投資家や中央銀行、外国からの資金が主な買い手だ。
銀行は貸し出したローン融資のほぼ半分をファニーメイかフレディマックに売却して残りはオンバランスで貸し続ける。ノンバンクはほぼ全てを売却し回収した資金を新たな融資に回す。ノンバンクは融資残を積み上げず、資金を回転させて稼ぐわけだ。
この資金の流れを逆からたどると機関投資家・中央銀行→ファニーメイ他→ノンバンク→住宅購入者ということになる。銀行ではローン融資の半分がこの流れに乗る。
ローンを売却した後も、債務者からの返済窓口を続け、投資家への分配業務を行う。いわゆるサービサーだ。債務者のローン返済が滞った時には6か月間、立替払いが求められるのだが、新型コロナの初期にこの立替が急膨張し、ノンバンク群は一時危機に陥いりかけた。
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