「ヴォノビア」

 ドイツはヨーロッパ最大の経済大国だが、同国の不動産ビジネスの話が世界的な話題になることは極めて少ない。その例外がヴォノビアで、同社はドイツ最大の不動産会社・賃貸マンションリートだ。賃貸戸数は39.7万戸である。

 

 ドイツの不動産が国際的に注目されない理由を二つの有力な都市でみてみよう。

 

 まずフランクフルトだが、欧州中央銀行がある金融の中心地なのに人口は僅か75万人で、どこにも自転車で行けるというサイズの中都市であり、国際的な不動産投資のターゲットにはならない。一時、ブレグジットによる移転先の最有力候補地とされていたが、金融マンの奥さんたちに「こんな田舎町はいやだ」と反対されたという。

 

 次はベルリンで人口は377万人、文化の香りも高いのだが東ドイツ時代の旧共産主義的感覚が市民意識の所々に残っている。家賃は上昇中だがヨーロッパの主要都市の中では最も安い。しかし家賃上昇に不満を持った市民の要求で市役所は家賃規制に踏み切り、その歪が今、出ている。

 

 ヴォノビアの物件はほとんどがドイツにあるが、スウェーデンとオーストリアにも若干の保有をしている。同社は現在に至るまでに何回も合従連衡を重ね、今も買収を重ねている典型的な「肉食会社」であり、これらの外国の物件も合併のおまけで付いてきたもののようだ。

 

 ヴォノビアが2015年当時に買収を試みたのが同業のドイチェ・ウーネン(16.3万戸)である。ヴォノビアが全国展開している(合併を重ねるうちにそうなった)のに対して、ドイチェ・ウーネンはほぼベルリンに特化している。

 

 当時、ドイチェ・ウーネンは買収されることを嫌がり、買収対象としての自社の魅力を低くするために2つの中小規模の賃貸マンションリートを買収して借金を増やした。これはM&Aのバトルの際に用いられる「焦土作戦」と呼ばれる対抗策だ。

 

 この時はこの買収話は流れたのだが、今年の4月、またヴォノビアによるドイチェ・ウーネンの買収話が浮上、実現すれば400億$(4.2兆円)という超大型の不動産会社が誕生するはずだった。しかし新型肺炎のせいか、この話には続報がない。

 

                             ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

 

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