カナダ本拠のトリプル・ファイブは巨大モールを核にしたウルトラ・スケールの開発で有名だ。マイアミで2年前に許可を取得した開発は約20万坪と小さ目のゴルフ場並みの広さで、モールの他にホテル、遊園地、ウォーターパーク、スケートリンク等も予定している。
稼働中の物件で有名なのはカナダの「ウェスト・エドモントン・モール」とアメリカのミネアポリスにある「モール・オブ・アメリカ」で、施設はマイアミの開発と同じように多岐にわたっている。前者は専門店数が800、後者は世界で最も来館客数が多いモールである。
「大きさ」だけを見れば東アジアと中東を中心にトリプルファイブの物件を超す巨大モールはいくつもある。「来館客数世界一」を自称しているところもあるがその数字は多分に疑わしく、本当は「モール・オブ・アメリカ」が来館客数世界一だろうとされている。
トリプル・ファイブは現在、二つの大問題を抱えている。
一つはニューヨーク市に隣接するニュージャージー州で開発した「アメリカン・ドリーム」が、運が悪い状態になっていることだ。屋内スキー場や遊園地等は昨年10月にオープン、肝心のモールを今年の3月19日と予定していたらロックダウンになってしまった。
おまけに主要テナントとしていたバーニーズ・ニューヨークやフォーエバー21が倒産した。意地悪く言えば、このビッグ・プロジェクトが構想されたのは20年も前の「モール」が華やかなりし時代であり、その後、ショッピングの情勢はとっくに変わっている。
もう一つの問題は、同社の大型の借金の返済が滞っていることだ。詳しい状況は把握できていないが、モール・オブ・アメリカ向けおよびアメリカン・ドリーム向けで巨額の債務で問題が起きていると伝えられている。
前者ではCMBS(商業不動産ローン証券)化された14億$(1480億円)のローンで延滞が起きている。普通のローンでの借入なら銀行は返済条件の変更に応じてくれることが多いのだが、CMBSでの調達では証券化の際に契約関係がきつく複雑に固まってしまい、後々の返済猶予等の条件変更の交渉が難しくなってしまう。これが銀行ローンであったならもう少し柔軟な対応がされたはずだ。
同社のこのローンは「特別サービサー」という債権管理や回収を専門とする会社に移管されてしまっていて、これらの会社はCMBSの投資家にとって最も有利になるように動かざるをえない。この問題がどう発展するか、注目される。
週刊住宅 2020年10月5日号掲載
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