アマゾンが不動産ビジネスに与えている影響の大きさはGAFAの中でも突出している。
ポジティブな影響の代表は「物流倉庫」だ。倉庫は近年、イメージが一変した。
まず立地が昔とは大違いだ。即日配達・翌日配達に対応するため、最近の倉庫の多くは都市のすぐ外側、場合によっては都市の内部に建てられている。次にそのハイテクぶりだ。ルンバを立てにしたようなロボットが走り回っている物がある。倉庫内で働いているスタッフの人数も多く、最近の倉庫は労働集約的でさえある。
物流倉庫は今では投資用不動産の一大ジャンルとなり、多くのリートも誕生した。アマゾンは先日、アメリカ国内に配送用拠点の倉庫1000棟を新たに建設すると発表した。配達時間をさらに短縮するためだが、これらもまた不動産ビジネスの材料となるだろう。
一方、ネガティブな影響を受けた代表格は「実店舗型の小売店」であり、それらが入居するモール等の商業不動産だ。特に「デパート」と「衣料品店」が痛手をこうむった。
近年、世界的に有名なデパートやブランドの破たんが相次ぎ、その最も大きな原因とされるのがオンライン通販の拡大である。
アマゾンの第二本社騒動もまだ記憶に新しい。スタッフ5万人が働く第二本社計画を発表するとこれに238都市が立候補し、ワシントン近郊とニューヨークのクィーンズが選ばれた。しかしクィーンズではこの巨大開発に対して民主党進歩派(左派)が主導する反対運動が起きてしまいアマゾンは途中で計画を撤回、この間、開発周辺に及ぶであろう恩恵を狙っていた地元の不動産業者たちは振り回されたのだった。
アマゾンはモール最大手のサイモン・プロパティとも意外な契約をした。モールから退店したデパートの跡の大きなスペースに「物流倉庫」として入居するというのだ。床荷重や荷物の導線の問題等の疑問も指摘されているが、もし実現すればモールやモール内の小売店は最大の敵と同居することになる。アマゾンは破綻した老舗高級百貨店のロード&テイラーの旗艦店だったマンハッタンの5番街の建物も購入し、オフィスとして使う。
これらはともに「小売用に建築されたスペースで小売業が成り立たなくなり、他の用途にコンバージョンされる」という大きな流れの中に位置づけられる話なのだろう。
すぐに新築へ建て直してしまう日本とは異なり、アメリカでは中古建物のコンバージョンはよく実施されるのだ。
週刊住宅 2020年9月28日号掲載