リモートワークを選択した人間は、いずれ組織からはじき出される運命となる

 「リモートワーク」「在宅勤務」「ハイブリッド」「純オフィス勤務」のどれが良いかについてかしましいが、最終的にこれを決めるのは「マーケット」だと思う。

 

 不動産デベロップメントで言えば、「オフィスに担当チームが集まって開発にあたる会社」とこれを「在宅勤務のネットワークで行う会社」では、圧倒的に勝負にならない。マーケットの力が在宅勤務を淘汰するのであって、本人の希望や会社の方針ではない。

 

 従業員についても同様だ。社内であれ社外であれ、労働市場というマーケットの中で淘汰が決まる。

 課長があるリモートワークの部下を気に食わなかったら、左遷に追い込むのは簡単となる。彼が苦手な課題を与え、それを各種5回もやらせれば「能力不足」の証拠となり、人事部に堂々と彼の左遷を依頼できるだろう。オフィスで仕事をしていれば先輩や窓際のおじさんが助けてくれていたであろうに、リモートワークでは自助努力となるのだ。

 

 リモートワークが進めばその分、オフィス床需要が減るというのもあまりにも幼稚な小学生の算数だ。20年くらい前にもサラリーマンの人間心理を理解していない人間が「組織論」を語り、やはり「小学生の算数」だとして揶揄された事があった。たまに聞かれる「日本は人口減少によりオフィス床が減る」という説も同じようなものだ。

 

 私が予想するに、「部員100人が使っていた部屋は40人をオフィス常駐者用とし、彼らには一人当たり従来の2倍のスペースを与え、残りの20席を60人のリモートワークなり、ハイブリッドで働く人たち用の共用机とする」ところが出てくるのではないだろうか?

 ここでは上司と日常的に接触するオフィス常駐者の方が、たまにオフィスに来るリモートワーカーより圧倒的に有利だ。上司に対応する業務のレスポンスが全然違うからだ。アメリカではこの差による昇格や昇進での差を懸念する職場の話がFTだったかWSJに出ていた。

 ちなみにアメリカと日本では従業員一人当たりの専有面積が全然違う。これは生産性に結び付く話だ。2倍のスペースを使えれば、生産性は5倍くらいになるかも知れない。

 

 これも「マーケット」の話であり、理念とかこうありたいといった話ではない。

 

 リモートワーク一本で働くという話に至っては、バカではないかと思う。

 世の中の状況は常に変わっていて、どのような業務もそれにつれて変化していく。ある時点である業務をリモートワークでこなせていたとしても、二年後までそのやり方で続くか、あるいはそもそもその業務が存在するかどうかさえ、誰にも分からない。

 リモートワーク一本の人間がこういった事態に対応できる可能性は極めて小さい。変化について日常的な接触の中で察知することを怠っていると、いざ変化が起きた時点では手遅れで仕事を切られてしまうわけだ。

 これもマーケットの話なのである。

 

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