安邦保険が韓国のミラエに売ったホテル15棟の所有権の所在の問題

★「グローバル不動産経済研究会」の会員向け暫定報告から

 

 中国の安邦保険(現・『大家保険』)の不動産取引で、超巨額のトラブルが起きている。

 

 2019年9月、安邦保険は韓国のミラエ・アセットとアメリカ所在の4ツ星クラスのホテル15棟(旧ストラテジック・ホテルズ16棟のうちの15棟)の売買を58億$(6260億円)で合意したと発表した。

 この15棟のうち数棟(5棟か7棟?)について、所有権登記が他人名義となっているという話は以前からあった。しかしミラエはこの問題を軽視し、手付金(数百億円)を払って契約、残りの資金はゴールドマン・サックスが手配するCMBSで調達する予定だった。

 

 ゴールドマン・サックスの担当弁護士は所有権が他人名義の状態のホテルがありこのままではCMBS化できないとミラエに指摘、ミラエは安邦保険に対してディールをキャンセルするとした。安邦保険はこの問題は説明済みでありミラエは「これは問題ではない」としていたとし、一方でミラエは「登記上の問題があるとは聞いていたが、詐欺事件の一部であるとは聞いていない」としたとしている。

 

 この「所有権」の問題は次のような経緯で起こった。 

 

 2016年ころまでの数年、中国勢による海外資産の買収が活発化、中でも特に巨額買収を重ねたのが安邦保険、HNA(海航集団)、大連万達、復星国際の4社である。

 

 これらの買収は次の問題を中国国内に起こした。

 当時、中国国内はバブル状態にあり、特に海外での巨額買収に伴う借り入れはシステミックリスク(銀行等の金融機関の連鎖倒産)を起こしかねないと危惧された。

 また海外資産の買収により中国は外貨準備高が急激に減少していた。中国は外貨準備高に通常とは異なりアフリカ諸国への投資ほかの流動性が低い物も含めた額を計上しており、実質的な流動性ははるかに低かったためにこのままでは外貨の流動性不足に陥る可能性が危惧された。

 

 このため、中国政府は金融機関に対して前記の4社への融資を控えるように公に指示、これは実質的な事業停止命令であった。安邦保険とHNAの会社内容が特に悪く、当局は安邦保険は政府管理下に置いて呉CEOを更迭し(後に投獄)、HNAは経営陣は残したまま政府管理下に置き、海外と国内の資産処分を進めた。

 

 安邦保険の呉CEOは同社が政府管理下に置かれる前に、自分が置かれた状況を察知した。ペーパー会社を設立して安邦保険からこの会社にホテル群の所有権を移転する合意書を作成、ディードとした。呉CEOはたぶん、保身なり資産保全を意図したと想像される。

 

 後にこのディードに基づき、正体不明の人間から所有権移転登記申請がされた。

 中国当局がこの話に気が付いたのが「政府管理下に置いた時」なのか「移転登記申請の時」なのか、不明である。

 

 今回の裁判の争点はこの所有権移転登記の有効性である。ペーパー会社の所有者の名前は明らかに偽名である上、所有権売買に伴って相応の金銭が支払われた形跡もない状況だ。

 

(グローバル不動産経済研究会会員向け添付資料は省略。ご希望の方はご連絡下さい。)

 

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