中国のマンション・デベのトップスリーというと万科企業、碧桂園と恒大集団だ。恒大集団は深圳本拠で香港市場に上場、170都市以上(!)で展開している。創業者で同社のトップである許家印会長は総資産が約3兆円と中国で第三位の富豪である。
中国のデベはどこも借金過多なのだが、同社は特にそれが激しい。負債額は自己資本の300倍もある。ファンドからしてみれば当然、「カラ売り」したくなるわけだが、株価はこの10年で9倍になっているので、カラ売り筋はおおやけどのはずだ。同社の多額の借金の原因の一つは電気自動車への入れ込み過ぎである。
さらに手付金(預託金)の扱いが国際標準と違う。アメリカでは受け取った手付金は別勘定として建築工事費としか使えない仕組みになっているが、中国のデベは(日本と同様に)手付金を資金繰りに組み入れて使い事が可能だ。
さらに中国では手付金授受から竣工引き渡しまで数年という物件が多い。つまり長期で無利子という、夢のような資金調達でもあるのだ。
新型肺炎と中国のデベの状況を見てみよう。
中国人は大変に不動産好きな国民性であり、それが行き過ぎて住宅投資でひと儲けしようという人間が続出、価格が高騰して庶民に不満がたまった。この投機の動きをけん制したのが「家は住むためのものであり儲けるためのものではない」という習近平の名言だ。
その後、市場はおだやかに上下し昨年の後半は軽度に軟調気味だった。
そこを新型肺炎が襲い、各地のマンション販売事務所は閉鎖された。まっさきに心配されたのは、デベの資金繰りだった。どの会社も借金過多の自転車操業であり恒大集団はなかでも特にひどく、手付金の入金が止まるとアウトとなる事が確実に思われた。
デベ各社はただちにバーチャル販売事務所に切り替えた。販売のペースは落ちたが、バーチャルでも結構売れた。もともとが図面売りであり、現地の販売事務所で模型を見るのも、スクリーンで映像を見るのもあまり変わらなかったのだ。
恒大集団はデベの中でも最も積極的にバーチャル販売を展開、価格のディスカウント幅を他社より大きくし、さらに解約時の手付金の全額返済と最低価格保証をセールスポイントとした。後者は非常に重要な点で、中国では二期、三期が一期より安い価格で販売されると、一期の購入客が販売事務所を取り囲んで暴動のような状態になることがあるからだ。
週刊住宅 2020年7月27日号掲載