「モービルホーム」というのは、工場でコンテナに窓や室内のキッチン等を備え付け、そのまままるごとを現地に運んで据え付ける住宅である。コンテナを2個あるいは3個以上を並べて住む場合もある。ユニットは最大のもので約41坪とされている。
もともと普通の住宅を買う余裕のない人を想定して販売されていた事から、今でも「安い」というイメージがこびりついている。新品のモービルホームの平均価格は6.78万$(725万円)だが、これには土地代のリース費や運搬費や設置費は含まれていない。居住者の4分の3は家計所得が4万$(428万円)以下だ。
昔はハリケーンで窓が壊れたりしたが、今は強度も外観も問題なく、さらにインテリアデザイナーを起用した物まである。しかし「モービルホーム」というだけで安くなる。
コンテナは「モービルホーム・パーク」と呼ばれる開発地の中でリースを受けて設置されることが多い。このようなパークは大小さまざま、全米に38,000箇所ある。ちなみにモービルホーム・パークでの土地賃貸に特化したリートが2本ある。株価はこの10年で非常に上昇したのだが、この人気化の原因は事業に手間が全くかからないことと手堅く安定的なことだった。
一般の住宅地にモービルホームを置こうとすると、周辺住民から反対運動が起こる事がある。自分の住宅の評価額が下落するとの理由だが、まるで嫌悪施設のような扱いだ。
モービルホームは名前とはうらはらに敷地に据え付けられて動く事はないのだが、税金対策のために車輪がついている。「不動産」扱いされると不動産税(固定資産税)が多額になるが、「乗り物」として扱われた場合には税額が一挙に小さくなるからだ。
一方、「乗り物」と認識されるのはデメリットでもある。アメリカでは中古住宅でも何年か経てば大抵の場合、購入価格よりも高くなっているものなのだが、モービルホームは「中古車」と同様に年とともにどんどん安くなってしまう。
モービルホームは普通の戸建てには手が届かないという人が買う場合が多いが、リタイアする時に今まで住んでいた家を売却してこれに住み替え、差額を老後の資金にあてるという人も多い。この層を狙って入居者を55才以上に限定したパークも多数ある。この場合、所有者兼住民にとって問題なのは居住性だけであり、資産性は関係なくなる。
一方、少しでも安く買いたいという人は、中古のモービルホームを買うことになる。
ジャパン・トランスナショナル 坪田
週刊住宅 2020年7月13日号掲載