ソフトバンクの孫CEOは一度信じた人をいつまでも信じ続けすぎる

 WeWorkといいOYOといい、ビジョンファンドのミスラ氏といい、天才的な実業家である孫正義CEOがなんでこんなヘマばかりをしているのかを想像してみた。

 

 孫氏は自分の資産の中の一定割合を隔離し、ビジネスが全損になってもこの隔離した資産は残ると考えて、その他は大胆に(ばくち的に)投資する、あるいは「これと見込んだ人間に任せる」と考えていたのではないか?

 総資産3兆円として、隔離するのを1割としても3000億円、1%としても300億円だ。同氏は62才なので、これでも十分な気がする。だいたい3兆円の資産を6兆円にしたところで、人生には大差ないのではと思う。

 

 WeWorkのニューマン氏、OYOのアガルワル氏、ビジョンファンドのミスラ氏は当初、孫CEOのお眼鏡にかない、巨額を任せたのだろう。

 孫氏ほどの人がバカな人選をするはずはないので、問題はこうやって任せられた人間が時とともに変節してしまうことだろう。ニューマン氏もアガルワル氏も、ある時点から能力をオーバーとなってしまった。誰しもがアリババのジャック・マ氏のようになるとは限らない。

 ビジョンファンドのミスラ氏はやりすぎた。サウジやアブダビからの出資を得るなりビジョンファンドの初期の投資先を発掘したりした貢献はあるのだろうが、いまやビジョンファンドは底が見えない泥沼に入りつつある。おまけにミスラ氏には悪い評判がこびりついていて、孫CEOがミスラ氏の肩を持てば持つほど孫CEOの人物鑑識眼への評価が一段と悪化する。

 

 普通の日本の企業なら「みずほFG」をあてに出来るが、ソフトバンクは国際企業だ。同社からの資金の引き上げは欧米から始まるのだろうが、まず孫CEOとの関係が深かったクレディスイスが孫氏関連の取引の一部を解消をする(=資金を引き上げる)見込みだ。これはソフトバンクにとって「終わりの始まり」となりかねない。

 アメリカやヨーロッパの金融機関は日本の銀行のようなビジネスモデルではない。

 資産をたくさん持つ企業、政府や国家そのもの、政府系企業は絶好の餌食だ。これらが行き詰った時には大量の資産が短期間に処分され換金化される。絶好のビッグなビジネスチャンスであり「feast(饗宴)」と呼ばれる。

 ソフトバンクとビジョンファンドについては、しゃぶり方のあらすじの検討がもう始まっているはずだ。

 孫CEOが大事に隔離して残しておこうとした資産にまでハイエナたちの手が及ぶ可能性は十分にある。

  

 ソフトバンクで進行中のスキャンダル3題/ワイアカード、クレディスイス、アーム中国

 

 ワイアカードの巨額資金消失事件にソフトバンクは絡むのか?

 

 以下は目に付いた比較的マイナーなメディアからが中心だ。

 

<<ワイアカード関連>>

 

ソフトバンクのトップ陣等、数億$(**億円)を儲け損なうことに (Market Insider 2020.6.23・火)

 ワイアカード株が80%も下落した事でソフトバンクのエグゼクティブ達とアブダビは数億$(**億円)の利益を逃した。これは2019年9月にソフトバンクがワイアカードへのディールに正式調印した翌日にクレディスイスが別の証券の形で売却し、ソフトバンクは一銭も出さずに数千万$(**億円)の利益を現金で得ていた。

 

ソフトバンクのドイツ銀行出身者達の美味しい仕組み投資 (Efinancialcarreas 2020.6.24・水)

 2019年4月はソフトバンクの名声がまだ高い時期で、ビジョンファンドのナヘタ氏はワイアカードへソフトバンクが出資すれば確実に同社の株は上昇するとみた。彼はドイツ銀行の出身でビジョンファンドのミスラ氏は元上司だった。クレディスイスは投資家にこの派生商品を高利回りで売却する際、株価の下落リスクも転嫁した。

 

ソフトバンクのドイツ銀行出身者達が「ドイツ株式会社」に与えた衝撃 (Euromoney 2020.6.25木)

 ワイカードでソフトバンクが行った普通ではない投資は、同社のドイツ銀行出身者達が仕組んだ物だ。中心はナヘタ氏とミスラ氏だが、今回ばかりは自己弁明に終始するドイツ当局も自己点検と意味のある改革をせざるを得ない。ドイツ銀行は1995年から2015年まで投資銀行業務を実験的にしていたが。ミスラ氏は世界金融危機の直前に同行を退社した。この時代、ドイツ銀行では上級幹部が投資からの利益に参加するのは通例だった。

 

ワイアカード問題でソフトバンクがEYへの提訴を予定 (CityA.M. 2020.6.26・金)

 ソフトバンクはワイアカードの会計監査を長年担当してきたEY(アーンスト・ヤング)を提訴する予定だ。ソフトバンクはワイアカードへの投資について精査に直面し、まだビジョンファンドでのWeWork他の一連の悲惨な投資でも批判を浴びている。EYの監査の不備はKPMGによる特別監査で明らかになった。

 

EY(アーンスト・ヤング)、ワイアカード問題からの大批判に身構える (FT 2020.6.29・月)

 ワイアカード問題はドイツで戦後最大の会計詐欺だ。不思議なのはEYが「銀行口座の証憑」という最も基本的な事を怠っていた事だ。さらにワイアカードの会計に対して、ジャーナリストや一部の投資家から10年以上に渡って疑問を出していたのに見逃していた。フィリピンの預金が架空である事を突き止めたのはKPMGだった。

 

EY(アーンスト・ヤング)、ワイアカード問題が拡大 (AccountingWEB 2020.7.1・水)

 ワイアカードの監査会社のEYに対して、ドイツ株主協会がEYのパートナー等3名を犯罪容疑で訴えた。ソフトバンクも訴訟の準備をしている。売上げを膨らますには現金か売掛金を膨らます事になるが、現金勘定の詐欺は大昔からあった。ドイツ政府は会計規則を改定すると共に、会計監視のパネルから権限を取り上げる。

 

ワイアカードの苦境をソフトバンクはどのようにして救っていたか (Daily Sabah 2020.7.3・金)

 ワイアカードの会計詐欺は額から言えば大した事はないが、四大会計会社の一つがこのような古典的で単純な粉飾を見逃していた事の方がよほどショックだ。ソフトバンクが金も出さずリスクも取らずに多額の利益を得ていた事は、詐欺があるかどうかよりも、どうのようにしてそのような取引を仕組んだかの方に注意すべきだ。

 

ワイアカードはコア部門である欧米でも赤字続きだった事が判明 (FT 2020.7.6・月)

 EYの監査を受けたワイアカードの決算は黒字続きの高収益会社であり、2016-18年には利益が倍増していた。しかしKPMGによる特別監査では同社は赤字でその粉飾はアジアの第三者会社への事業のアウトソースで行われ、これが今回の会計スキャンダルの中心だ。しかしアジア部門を除外しても同社は2016年以降、赤字だった。

 

 

<<クレディスイスのファンドでの「循環出資」関連>>

 

ソフトバンクとクレディスイスのお金の回し方に要注意 (Financia Review 2020.6.16・水)

 ソフトバンクがクレディスイスのファンドに5億$(**億円)を出資、そのファンドからビジョンファンド出資の会社に資金が流れていたが、これは孫CEOがビジョンファンドの為に採用したドイツ銀行出身者達による投資に加速を付ける物だった。しかしこれはクレディスイスのファンドの他の出資者にとっては明白な利益相談だ。

ソフトバンクで進行中のスキャンダル3題/ワイアカード、クレディスイス、アーム中国

 

クレディスイス、ソフトバンク関連の自社ファンドを内部調査 (Corona Stocks 2020.6.24・水)

 クレディスイスはソフトバンクによる「循環ファイナンス」のスキームに関与しているとして自社のサプライチェーン金融向けファンドの内部調査に入った。これらのファンドはやはりソフトバンクが大口出資しているグリーンシルがアドバイスをしている。ファンドの出資先上位6社のうち4社がソフトバンク出資の会社だ。

 

クレディスイス、ソフトバンクに関連するファンドの内部調査を開始 (BB 2020.6.24・水)

 ソフトバンクから多額の出資を受け、利益相反が疑われているクレディスイスのファンド群について、ファンドの運用会社に決定権があり利益相反は起こしていないと同行はしているが、同様な事案も含めて内部調査を行うとした。これらのファンド群からは新型肺炎問題もあり年初から16億$(**億円)もの引き出しがされている。

 

クレディスイス、ソフトバンクとの錯綜した関係の巻き戻しへ (Finenews 2020.6.24・水)

 クレディスイスとソフトバンクや孫CEOとの関係は込み入っている。孫CEOは同行のプライベートバンク部門から借りた資金をビジョンファンドに注ぎ込んだとされるが、他にジュリアス・ベア、Jサフラ、LGT、みずほからも借り入れている。クレディスイスの資産運用部門は孫氏との不自然な連携を書類で法的に調べている。

 

クレディスイスのソフトバンクとのもつれたつながり (Finenews 2020.6.29・月)

 クレディスイスはソフトバンクとの繋がりに明らかに神経質になっており、孫氏との関係の一部は絶とうとしている。クレディスイスの75億$(**億円)のサプライチェーン金融ファンドは同行とグリーンシルの共同運営だったが、ビジョンファンドはグリーンシルに14億$(**億円)を出資している上、ファンドはビジョンファンドの出資先数社に出資していて、循環出資の状態だ。孫氏は保有株の40%を担保にして19行から借り入れているが、クレディスイスもその一つだ。新型肺炎問題の時に担保割れを起こしそうだったが、銀行群は黙っていた。

 

 

<<アーム中国関連>>

 

ソフトバンク傘下のアーム中国、現職CEOへの反駁を拒否 (Gadgets.Ndtv 2020.6.11・木)

 ソフトバンク傘下のアームと中国のホプ・インベストメントの合弁会社であるアーム中国は、呉CEOの重大な規則違反から彼を暫定共同CEOと置き換えるとしたが、アーム中国側は呉氏のCEO職を継続するとした。アーム中国は呉氏更迭の為に開かれた6月4日の役員会について、その後の手続きが進められていないとしている。