「GLP」

 GLPはアジア最大の物流倉庫会社だが、2019年にアメリカ所在の倉庫約200棟をファンドのブラックストーンへ売却し、資産のほとんどは現在はアジアにある。

 

 同社は2017年に行った「身売り」で世界の金融界を呆れさせる事をした。シンガポールは「金融先進国」を自認しているが、この一件でその民度は意外と低いとされたのだった。

 

 一方、日本GLPは大変先進的だ。日銀のマイナス金利政策導入からまだ日が浅かった時、長期債務の金利をマイナス金利で固定するという離れ業をやってみせた。その先進性が高く評価された直後であったため、親会社の以下のような話はなおさら残念な物でもあった。

 

 GLPの最大株主である政府系のファンド・GICから同社への保有持ち分を全て売却したいされた時、GLPトップはそれならばGLPの全株式を外部に売ろうということになった。

 

 1兆円規模の超大型のディールになるので投資銀行やファンドの目の色が変わった。ウォーバーグ・ピンカスが先行、続いてブラックストーン、KKR、RRJ、TPGといったM&Aではお馴染みの所が手をあげた。その中に中国のホプ・インベストメントがあった。

 

 ところがここで「シンガポールの金融界の民度の低さ」が露呈した。ホプ・インベストメントが主導するコンソーシアムの代表者の一人がなんとGLPのCEOのミング・メイ氏そのもので、おまけにGLPの中国資産には彼らになんらかの拒否権があるようなのだった。

 

 入札に応札するには資産の査定という手間がかかる計算が必要で、それには様々な仮定を置く必要がある。一方でミング・メイ氏は誰よりもGLPの資産内容に詳しい訳で、簡単に正確な計算をできる。また入札前の様々な接触を通じて、どの応札者がどのようなスタンスなのかも知ることができる。他のファンドにとっては今回の話では入札という形を演出するための「ダシ」に使われるようなもので、「これは茶番だ」との非難があがった。

 

 結局、ミング・メイ氏のファンドとウォーバーグ・ピンカスの二社だけが札を入れた。

 結果はミング・メイ氏側が3.38S$、ウォーバーグ・ピンカスが3.50S$(但し非拘束)。

 

 これが意味する所は明らかで、GLPなりシンガポール政府から「入札の格好を付けたい」と頼まれ、ウォーバーグ・ピンカスは皮肉を込めてミング・メイ氏より少しだけ高い価格を付けたが非拘束としたのだろう。そしてGLPは「安値」の売却先を選ぶ事になったのだった。

 

週刊住宅 2020年6月8日号掲載