プロロジスは物流倉庫最大手であるだけではなく、世界最大規模の不動産会社でもある。同社と首位の座を競うのはサイモン・プロパティ(モール会社)だ。幾度もの合併を重ねて今日の社名になったので、大会社の割にはなじみが薄いかもしれない。
時価総額は現在678億$(7.3兆円)で、これは三井不動産(1.9兆円)、三菱地所(2.4兆円)の3.3倍だ。ホームページによれば世界19ヶ国に4649の倉庫等、合計9.64億平方フィート(2800万坪)を保有・運営している。
物流倉庫はオンライン通販の拡大から最も恩恵を受けた不動産セクターであり、いくら建てても埋まる状態が続いていた。現下の新型肺炎問題についても、これによりオンライン通販への移行が進むので物流倉庫にはかえってプラスの面があるようだ。
「倉庫」のイメージも時代により大きく変わっている。昔は倉庫は港の近くや工場地帯の中にあったが、その後はインターチェンジの近くが良いとされ、今、新築されているものは都市に近接するすぐ外側、あるいは都市の内部だ。
こうなった要因の一つは「即日配送」「翌日配送」への対応で、物流には常に「ラスト・ワンマイル問題」がある。配送センターに運びこむ所まではよいのだが顧客の元まで届ける「最後の1マイル」がますます重要となり、倉庫が顧客の近くにあれば何とかしやすい。
もう一つの要因は、最近の倉庫は昔の同じ規模の物に比べて人手が3-10倍かかるようになったことで、これにより求人のしやすさが非常に重要になった。倉庫内では無数のロボットがルンバのように動き回っていたり猛スピードで仕分けをしたりしてはいるのだが、途中に挟まる人手による作業の量が膨大になっている。注文の品を揃えるピッキングにも最後は人手によっている。都市に近接した立地の倉庫は、人手集めの点で有利なのだ。
物流倉庫が都市内に立地することで起きた変化は高層化だ。以前であれば倉庫は郊外の広い土地に平屋で建てるものであり、わざわざ二階建てにする必要性は全くなかった。プロロジスが昨年シアトルでアメリカ初の三階建ての物をオープンした時、とうとう倉庫が三階建てになったとして話題になったのだが、この時、四階建ても各地で建築中だった。四階建ての倉庫は普通のビルの12階建て相当の高さがある。
最近の倉庫はオンライン通販で販売されたものの返品処理の場所にもなっていて、役割がますます重要になっている。冷凍倉庫もねらい目の一つに見えるが、これは倉庫だけを冷凍にしても意味がないわけで意外と難しい。
週刊住宅 2020年4月20号掲載