不動産会社に銀行の役目をしろと言われても無理だ/新型肺炎下でのアメリカの状況

 アメリカで今、顕著なのは、「不動産会社が銀行みたいになっている」ことだ。

 売上げ急減で家賃が払えないテナントが続出しているが、それに便乗して家賃を払えるのに払わないテナントがいる。すると家主はテナントの財務状況をチェックしてどうするか判断しなくてはいけない。これは融資判断をする時に銀行がしている業務だ。

 家賃が入らなくても税金や保険料やユーティリティ、人件費、金利等の資本コストは出ていく。モール所有会社は今の所、なんとかやりくりしているが、このようにお金を立て替えて出すのは本来なら銀行の役割だ。

 

 新型肺炎下のアメリカの不動産ビジネスの現在を以下に点描する。

 

 「ホテル」は旅行禁止令もあり、どうしようもない。ニューヨークのホテルの稼働率は3月末で15%で、スタッフを切って営業を休止したホテルが多い。超高級ホテルのフォーシーズンズは部屋を病院スタッフへ無料提供している。

 「モール」は先に述べた。H&Mとアディダスはとぼけて家賃を払おうとしなかった(ヨーロッパでの話)。特にアディダスはドイツ政府の中小企業救済向け資金を受けようとしてわざと家賃の不払いをして世論からふざけるなと批判され、公的に謝罪するはめになった。

 失業者の増大、モール家賃の支払い不能の続出からMBSとCMBSの価格が下落、一部のリートやファンドが混乱し、10億$(1100億円)オーダーの不動産取引が表面化しただけで2件流れた。

「賃貸マンション」でも失業の増加で、ニューヨークでは借家人の4割が4月末の家賃を払えないだろうと見られている。

「オフィスビル」は長期リース契約が中心なので安全かと思われていたら、家賃の値下げを求めるテナントが続出している。新規貸し付けも例年より半減した。

 こうやってみると主要セクターで安全そうなのは物流倉庫だけだ。

 

 既存住宅(中古住宅)ではクロージングに大変な手間がかかっている。書類はドアの下や車の窓のすきまを通して受け渡しし、公証人、鑑定士は家から出ないので仲介業者が走り回って書類を集めているが、登記をする役所が閉鎖されている。さらに契約書にサイン済みなのに、値引きを持ち出す購入者までいる。

 新規客は見学ツアーやオープンハウス訪問という初期の段階でつまずくいている。しかし今は秋の新入学シーズンから逆算して春のうちに新しい家を買っておきたいという客もいるし、今のような状況下で買いたいとする客は本気の客である事も多く、仲介業者も気を抜けない。

 この辺の状況はロックダウンの強化で直近では変わっているはずだ。

新築物件はデベはバーチャルツアーで売っている。

 マンションの建築工事は当初はビジネス停止の対象外だとして工事を続行していたのだが、これも停止対象になった。

 

 保養地のハンプトンズではニューヨークから逃げてきたセレブが嫌われている。グロサリーですぐに買い占めをするので、地元の住民が肉や野菜を買えないのだ。住民は当番で店舗を見張り、商品搬入のトラックが着いたらすぐにフェイスブックで住民仲間に連絡し、買い占められる前に自分たちの分を買っている。ウイルスが持ち込まれると地元の病院のキャパが小さい事が懸念される。

 

 以上、日本でも日本的にアレンジされた、似たような状況が起こるだろう。

 

Ps 東京から軽井沢に避難する人が多いようだが、今の時期はまだ非常に寒いので風邪をひいて普通の肺炎にならないようにご注意のほどを。

 

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