「ムハンマド皇太子」

 サウジアラビアの王子・王女の数は今はたぶん数千人以上のはずだが、その中でムハンマド皇太子は別格中の別格だ。今年35才、既に国王から権限移譲を受けている。若き独裁者であり、北朝鮮の金正恩と違う点はとんでもなくお金を持っていることだ。

 

 皇太子と不動産との接点の例を3つだけ上げよう。一つはパリ郊外のベルサイユにある古城の密集地帯に建てられた、「城の新築建売り」を2.75億€(327億円)で買ったことだ。

 

 またサウジはソフトバンクのビジョンファンド最大の出資者だ。このファンドは不動産関係でも多くの会社に出資、ムハンマド皇太子は間接的に不動産のIT化に寄与している。

 

 ところがとんでもない事件が起きた。サウジ政府を批判するコラムを頻繁にワシントンポスト紙に載せていたサウジ人ジャーナリストがトルコで殺害され、それを指令したのはムハンマド皇太子以外にはありえなかった。

 

 このような殺人指示者との間の取り方に世界中がとまどっていた時、真っ先に近づいたのはソフトバンクの孫CEOだった。これを機に皇太子は国際社会に復帰できた。

 

 信憑性のある話なのかどうか、彼は海外で10人の殺人を指示し、国内で1000人を処刑したと言われる。日本の戦国時代のメンタリティなのである。

 

 ワシントンポスト紙はトランプ大統領批判でも知られるが、社主はアマゾンのベゾスCEOだ。ムハンマド皇太子はパーティーで会ったベゾス氏とスマホの通信アプリを交換、マルウエアをベゾス氏のスマホに仕込み、彼の個人情報を抜き取った。

 

 これはカショギ氏対策の情報を得る目的だったのだが、不倫中のベゾス氏のプライベートな写真やメール等も取得してしまった。そしてこれらがワシントンのイエローなタブロイド紙に流れ、なんとベゾス氏の脅迫に使われた。ワシンポスト紙は反トランプである一方、タブロイド紙のオーナーはトランプ大統領と女性スキャンダルを金でもみ消す仲だった。ベゾス氏への脅しが社主であるワシントンポスト紙への警告でもあることは明らかだった。

 

 世界一の富豪であるベゾス氏はタブロイド紙とそのオーナーからの脅迫にひどく憤り、私がこのような卑劣な脅しに屈するなら、誰がこのようなイエローに対抗できようかと宣言、相当なお金を費やしてとうとうムハンマド皇太子の悪さにたどりついたのだった。

 

 さて、以上の話がどう「不動産」に関係するかだが、この時期、アマゾンはニューヨークの第二本社計画を反対運動の拡大で撤回している。ムハンマド皇太子がスマホに悪さをしなければ、ベゾス氏は第二本社計画でもっと粘っていたかも知れないのだった。

 

                       ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

 

週刊住宅 2020年2月24日号掲載