三井不動産のマンハッタンでの超大型投資の成功がほぼ確定

 三井不動産はマンハッタンで進行中の巨大開発、ハドソンヤード内の大型ビルに超巨額を投資していましたが、成功がほぼ確実となりました。

 

 2本のビルに約1,000億円と約4,000億円を投資していたのですが、先日、ニューヨークでのオフィスの集約と拡張を進めるフェイスブックが大口の賃借を決め、前者のビルは満室稼働、後者のビルは2022年竣工予定だというのにもう75%の床が契約となっています。

 

 三井不動産はニューヨークでは以前は石油メジャーのエクソンが本社としていた超高層ビルを、ワイキキでは高級ホテルとして名高いハレクラニを所有、ロンドンではBBCの再開発を成功させ、東南アジアや台湾でもSC、マンション、ホテルを中心に展開しています。

 

 このような輝かしい成功の「前史」にはカトマンズや西安でのホテルの失敗、パリの邸宅に関する市当局との交渉の失敗、ロサンジェルスで泣く泣く手放した2本の超高層ビル等がある訳ですが、同社の常に前向きな姿勢が今回の大成功に結び付いているようです。

 

 ハドソンヤードはマンハッタンのビジネスの中心地であるミッドタウンの西側にある、ハドソン川に面した鉄道の操車場(ヤード)を中心とした超大規模再開発です。

 

 2008年に催された提案コンペにより、デベのリレイテッドが主導して開発が進められることになりました。三井不動産はこのプロジェクトでは「不動産デベロッパー」と「財務的な出資者」の中間的な位置づけと言えると思います。

 

 これが呼び水になって、周辺にもいろいろな企業が集まり始めています。最も注目されるのは、従前は西海岸のサンフランシスコやシアトルに集積していたIT企業群の動きで、これらが続々とニューヨーク、特にハドソンヤードの周辺で拠点を拡大しつつあります。

 

 冒頭のフェイスブックはその一つですが、アマゾンはごく近くに中規模のオフィスを賃借しました。同社は昨年、クィーンズでの25,000人規模の第二本社計画を地元の反対で撤回しましたが、ニューヨークの魅力には勝てなかったようです。オフィスを無駄に分散させるはずがないので、今後は今回のビルの周辺に借り増すと予想され、ハドソンヤード周辺のポテンシャルはますます上昇することになるでしょう。

 

 グーグルもハドソンヤードから歩いて10分くらいの場所にオフィスの集結を図っています。中規模以下のIT会社も移転が増えています。

 

 金融のダウンタウン(ウォール街を含む)、事業会社が中心のミッドタウンに続いて、ハドソンヤードが所在するミッドタウン・ウエストが「東のシリコンバレー」と呼ばれる日も近いかも知れません。

 

                                                                                                          ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清

三井不動産リアルティ㈱発行

REALTY-news Vol.57 2月 2020年 掲載