「リレイティッド」

 ニューヨーク本拠のデベには有力なところが数社あり、昔はリレイティッドはその中の一つに過ぎなかった。ところがマンハッタンでの超大規模再開発、ハドソンヤードで同社は同業他社とは隔絶した位置付けのデベとなった。同社について、ここではこの「ハドソンヤード」に話を絞ろう。

 

 マンハッタンの西側を流れるハドソン川に面して鉄道の大きな操車場(ヤード)があり、2008年にこの再開発についての提案コンペが行われた。競合するエクステルやティッシュマン・スパイヤー他を抑え、リレイティッドがこれを勝ち取った。

 

 リレイティッドは開発を2つのフェーズに分け、そのフェーズⅠに現在、ほぼ目鼻がついている。オフィスビル4棟、分譲マンション2棟、商業施設棟1棟他が含まれる。

 

 日本の三井不動産はオフィスビル2棟に大型投資しているが、先日フェイスブックが大口の入居を決めたことでこれらの投資は大成功となることが早くもほぼ確定した状態だ。

 

 三井不動産の最初の投資は約1000億円、51階建てのビルの持ち分92.09%%で竣工した時の稼働率は約90%だった。これが今回のフェイスブックの入居で100%稼働となった。

 

 もう片方はハドソンヤードの中で最大規模、ニューヨークでも賃貸面積で第4位という58階建ての超大型ビルへの投資、約4000億円だ。こちらには世界最大規模のファンドであるブラックロックが既に決まっていたが、今回のフェイスブックの入居で早くも75%が埋まった。

このビルの竣工は2022年の予定だ。ブラックロックやフェイスブックの入居があれば、両社の取引会社や各種の事務所が吸い寄せられてくる事は間違いない。残りの25%も早晩、埋まるものと期待できる。

 

 一方、フェーズⅠで最も苦戦しているのはニーマン・マーカスが核テナントとなった商業施設棟で、2棟のマンションの売れ行きも市況の悪化にぶつかり芳しくない。

 

 超大規模開発は非常に長い時間を要するので、このような市況の変化というリスクは付き物だ。三井不動産は幸いにも商業施設棟やマンションには参加していない。

 

 リレイティッドは現在、フェーズⅡの開発へ向けて作業を進行中だ。オリジナルの計画ではオフィスは1棟で、残りの数棟はマンションとなっている。

 

 ハドソンヤードの周辺にはアマゾンやグーグルもオフィスを集約し始めた。ニューヨークなり、そのミッドタウン・ウエスト地区は「東のシリコンバレー」になりつつある。

 

週刊住宅 2020年2月10日号掲載

 

                        ジャパン・トランスナショナル 坪田 清