「ドバイ」

 ドバイはアラブ首長国連邦(UAE)を構成する国の一つで、以前は首都のアブダビよりも知名度がかなり上だった。ドバイではほとんど原油は出ないのだが商都として繁栄、中東のこの地域のマネーの多くがドバイ経由で世界に出て行った。

 

 原油価格が高い時代はマネーが非常に早く動き、主にヨーロッパの金融マンが手早く稼ごうとして集結、ドバイは世界の金融市場を語る上で欠かせなかった。

 

 ドバイで最も有名な建物は高さが828mと世界一である「ブルジュ・ハリファ」で、オフィス、ホテル、住宅、レストラン等からなる複合超高層ビルだ。オープンは2010年1月だが、この直前にドバイ・ショックが起きた。政府系会社が現地の各金融機関に「当社は借金の返済を当面見合わせる」というファックスを銀行等に送りつけ、そのまま砂漠での数日間のキャンプに出掛けて音信不通となり、事情を確認できない現地の各行の間で大騒ぎとなったという事件だ。ギリシャで問題が発覚した直後であったことも騒ぎを大きくした。

 

 これは雇われていたヨーロッパ系の金融マンたちが取引を複雑にし過ぎたために、訳がわからなくなったことが直接的な原因と伝えられている。アブダビがドバイに金融支援を行い、この危機を乗り切った。「ブルジュ・ハリファ」は元々は「ブルジュ・ドバイ」という名で建築工事が進められていたが、オープンセレモニーの日にアブダビの首長の名にちなんだ今の名称に変更された。

 

 ドバイは超高層マンションの密集地でもある。高さで見て世界の超高層マンション・トップ10のうち7棟はドバイにある。しかし明らかに建て過ぎであり、かつそれが止まる気配がない。2019年は約3万戸が建設されたが、これは年間の需要の2倍だ。価格はピークだった5年前から3割下落している。業界のトップはマンション建設の停止を呼びかけている。ヨーロッパから来ていた出稼ぎ金融マンたちは、多数が帰り支度をしているのだ。

 

 ドバイ・モールは総面積111.5万㎡(34万坪)で店舗数は1200、水族館ほかもあり世界最大のショッピング・モールだとされている。1平方キロ以上あるわけだが、ドバイではこれを上回る大きさのショッピング・モールの建設が進んでいる。また、エミレーツ・モールという別の大型モールには、屋内人口スキー場が付帯している。他にも大小、数十のモールがある。ドバイは観光客を熱心に誘致しているのだ。

 

 しかし、長引く原油価格の低迷の影響でこれらのモールにも空室が目立っている。にもかかわらずモールは今も次々と建てられていて、特に中クラスのモールが苦戦している。

 

週刊住宅 2020年1月27日号掲載

                       ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

               グローバル不動産経済研究会の問い合わせ:f-ree@88.netyou.jp