ウィ・ワーク(WeWork)のビジネスモデルは「コワーキング」「シェアオフィス」などと呼ばれている。拠点数は世界でざっくり600ヶ所だが、2020年中にさらに数百ヶ所をオープンする。
非常に順調な急成長という見かけと内実が正反対であることはよく知られている。昨年9月にアメリカでIPO・新規上場を試みたが、歴史に残る大失敗となった。
それどころか同社の資金繰りはこのIPOの成功を前提としていたものだったので、そのままでは11月中にはキャッシュが枯渇するという非常事態にあることが判明した。
JPモルガンとソフトバンクGが救済策を提案、ソフトバンクGの方が合計約1兆円を提案して当座の救済を図ることになった。同社はこれ以前に約1兆円をウィ・ワークに投資しており、最大2兆円を負担することになったわけだ。
なぜソフトバンクGなり同社の孫CEOがこの程度の、それも麻薬常用者が率いるちゃちな会社にこれほどの巨額をつぎ込む決断をしたのかという点は、理解に苦しむ。
ソフトバンクGが投資会社として「今後も利益を出す」ために、ウィ・ワークは欠かせないとでも考えたのだろうか。既出資先の株をしばらく後に高値で買い増しして従前からの分について評価益を出し、その後に今度はそれを上場させてさらに評価益を出すなり資金回収する、このビジネスモデルの仕掛けとしてウィ・ワークが必要と考えたのかもしれない。
「高値で取得した非上場株をさらに高値で上場市場で売り抜ける」というのは一般投資家をバカにした話で、IPOの失敗は株式市場が有効に機能した証左だという面がある。
今後の見通しだが、既存拠点は会員の平均単価が下落中で稼働率も悪化中、激増する新規オープンの拠点には立地が悪い所が多い。同社の会員であることのスタイリッシュさは今は真逆になり、従業員は大規模リストラ予定でやる気をなくしている。良い話がない状態だ。
ウィ・ワークは傘下の多数の特別目的会社(SPC)が個別の拠点の法的な当事者となっているとされる。そうならば家賃が払えなくなった時はSPCを倒産させて逃げるという奥の手がある。このような倒産隔離のスキームはアメリカの不動産ビジネスではごく一般的だ。
ソフトバンクGは成長やシェア獲得の優先を要求し希望額以上の巨額を出資、(最近まで)利益を上げることは求めなかった。これでは「お金をばらまけ」と言っていたようなもので、実際ウィ・ワークも財務的にはお金をばらまいてきただけだ。大小は異なるが、似た状況にあるソフトバンクGの出資先はアメリカ、インド、イギリス等にもいくつかある。
週刊住宅 2020年1月13日号掲載