「HNA(海航集団)」

 HNAは「中国のハワイ」である海南島を拠点とした小さな航空会社から出発して急速に規模を拡大、2014年から2017年にかけて世界各地で各種の大型買収を何件も行った。スキームを複雑にしすぎて自分たちにも訳が分からなくなるという事も起きたが、それ以前に誰がHNAの真の所有者(株主)なのかが不分明という、きわめて中国的な問題も起きた。

 

 同社の運命が暗転したのは2017年6月だ。当時、海外投資を盛大に行っていた4社について、中国の銀行規制当局が「システミックリスクの誘発(銀行等の連鎖倒産)」を警告した。名指しされたのはHNA、安邦保険、大連万達、復星集団だ。

 

 これは日本のバブル潰しの際に大蔵省が各銀行に対して行った不動産業等への貸し付けの「総量規制」に相当する。当時、日本では個別の融資先を特定せず、非常に大きな混乱が起きてしまった。中国はこの轍を踏まぬよう、具体的な会社名を名指しをしたのだろう。

 

 以降、上記の4社を筆頭にして中国勢の海外不動産投資はしぼむことになる。不動産を購入するために必要なドルはもう手に入らなくなってしまった。

 

 HNAは中国勢で最大の買収者であり、2015年以降80件余、400億$(4.7兆円)以上の買収を実施、デットは1000億$(11兆円)にのぼった。以降、当局が経営に深く介入しながら、買収の巻き戻しを図っていった。

HNAの投資先を大きく分けると、「不動産」「航空会社と航空関連サービス」「金融」だった。同社は祖業に回帰するため、航空とその関連サービス以外を売却することにした。

 

 マンハッタンの大型ビルはSLグリーンへ、サンフランシスコのビルは香港のガウキャピタルへ、シドニーのビルはブラックストーンへ売却された。入札で取得した香港の啓徳空港跡地開発の3区画も、ブラックストーンから取得したホテルのヒルトン株も売却された。

 

 これらの不動産関連の売却はすべて黒字だった。HNAの買い方が賢かった面もあるが、この間、世界の商業不動産がいかに値上がりを続けていたかとみるべきだろう。

 

 2018年6月、中国人民銀行が主宰し、関係5者が集まる大がかりな会議が持たれ、HNAの資金繰りへの支援が決まった。そのしばらく前、同社の資金繰りは利払いすらできないほどタイトになっていたのだ。

 

 同社は引き続き資産売却を続けている。当初は売却の対象とせずに本業として残すとしていた「航空会社と航空関連サービス」まで売却するようになってしまっている。

 

週刊住宅 2019年12月23日号掲載