「ヒルトン」

 ホテルチェーンのランキングは、世界最大のチェーンがマリオット(米)、第二位グループがインターコンチネンタル(IHG・米)とヒルトン(米)とアコー(仏)、少々離されてハイアット(米)という事で良いだろう。

 

 そのヒルトンがブラックストーンに260億$(2.8兆円)という巨額買収をされたのは2007年の7月だ。当時は株式市場が過熱しすぎており、これは高値づかみとの懸念が持たれていた。ヒルトンはホテル会社だが、不動産部門がこの買収を担当した。

 

 ブラックストーンはヒルトンを非上場化した上で同社を筋肉体質に変え、また旗艦ホテルであるウォルドルフ・アストリアを中国の安邦保険へ売却することもした。

 その後、ブラックストーンは中国のHNA宛の売却や再上場時のものを含めてヒルトン株を数回に分けて売却、2018年の5月の最終回の売却でこのディールからの利益額を確定させた。その額は140億$(1.5兆円)にも上り、これはプライベート・エクィティによる単独のディールとしては史上最高額だった。

 

 ちなみに安邦保険はウォルドルフ・アストリアの低層階部分をホテルとして残し、上層階の客室は連結して超高額マンションへコンバージョンの工事中だ。来年から販売開始の予定で、最上階の二住戸は数十億円になるとされている。

 

 HNAはブラックストーンからヒルトン株25%分を65億$(7090億円)で取得したのだが、その後、何回かに分けてこれを売却、総額20億$(2200億円)以上の利益を上げている。

 

 安邦保険もHNAも海外での巨額買収を中国当局ににらまれ、資産処分中なのだ。

 

 ホテルビジネスは脱不動産保有やフランチャイズ制度の多様化、オンライン旅行代理店や民泊業界の伸展といった流れの中で変容しつつある。

 

 ここでは比較的瑣末だが、直近における話題を書きたい。

 

 一つ目は「オールインクルーシブ」というタイプのビジネスに、ヒルトンも本格進出する。「オールインクルーシブ」では宿泊料、食事と飲み物、付帯する大小のプールやジム等、滞在中の全ての費用が含まれた料金で売られる。カリブ海に多く存在し、「安上がりなリゾート」というイメージがあるが、ヒルトンはこれをハイエンドな形で行おうとしている。

 

 二つ目は「リゾート・フィー」で、これは明示された宿泊料に「ジム使用料」「WiFi使用料」等の様々な理由をつけて上乗せ、宿泊客に請求する慣行で利用者からは非常に評判が悪い(当たり前だ)。広がりを見せているために当局も実態調査に乗り出して規制をかける見込みで、ヒルトンの場合は79ホテルで一泊15-45$(1600-4900円)、これを請求していた。

 なぜ「リゾート・フィー」と呼ばれるようになったかだが、元々カリフォルニアのビーチリゾートのホテルが、浜辺にあるカバナ(あずまや)の使用料として請求したことが語源だ。

 

週刊住宅 2019年11月25日号掲載