カタールはアラビア半島から突き出た半島部の国で、原油や天然ガスが豊富だ。日本への輸出量も多額に上る。サウジ、アラブ首長国連邦等とともに湾岸協力会議を構成している。
カタール発の不動産投資は投資主体がいくつかあり、総称して「カタール人(カタール勢)による投資」とされることも多い。
その中で最大規模なのはカタール投資庁だ。いわゆるソブリン・ウエルス・ファンド(SWF)で資産規模はおおよそ3200億$(34兆円)・世界第11位とされる。ただしSWFに関わる統計の性格上、これらの数字は目安程度にしかならない。
カタール投資庁の投資先は不動産と有名企業の株だが、宗主国であるイギリス関係のものが非常に多い。
「シャード」というイギリスで最も背が高いビルはカタールの出資がなければ完成しなかった。テームズ川をはさんでシティ地区の反対側に建つ、ピラミッドを高く引き伸ばしたような形の超高層ビルだ。
ロンドンのカナリーウォーフ開発で重要な役割を果たしたカナリーウォーフグループの主要株主にもなった。これはカナダのブルックフィールドと共同して行った複雑な経緯を持つ話だった。
カタール投資庁以外のカタール勢による不動産投資にはロンドンの高級住宅地であるチェルシーでの投資、オリンピック・ビレッジへの投資参画、インターコンティネンタルホテルの買収などがあり、一部はアメリカでも投資している。
カタール投資庁によるイギリス企業の株式の大型取得先にはバークレイズ(銀行)、ロンドン証券取引所、セインズベリー(スーパー)、ハロッズ(デパート)等があり、イギリス以外の企業としてはフォルクスワーゲン、グレンコア(資源商社)、ティファニー(宝飾品)等がある。
カタールは話題の多い国でもある。
統計によれば同国の国民一人当たりGDPは世界首位、日本の約3倍だ。
2022年のサッカーのワールドカップの主催国なのだが、酷暑が危惧されている。日本人にとっては1993年に起きた「ドーハの悲劇」の方も忘れられないだろう。
血の気が多い国でもあり、シリア危機での裏での介入、エジプトのムスリム同胞団への支援を巡り周辺諸国と対立、2017年には周辺諸国との国交断絶という事態に至った。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2019年10月14日号掲載