宿泊仲介サイトとして有名なエアビーエヌビーの世界のリスティング数は600万件、ユーザー数は1.5億人とされる。
民泊仲介のパイオニアだが、拡大の過程では世界各地で軋轢を起こしてきた。一つはこれらと正面から競合するホテル業界からの異議、もう一つは同社が住宅家賃の高騰を引き起こしているという問題だ。家主としては居住用の賃貸として貸すよりもエアビーに出した方が儲かるので賃貸住宅の供給数が減るなり、家賃水準がエアビーに出したとき並みの水準に上昇してしまったのだ。
この軋轢はニューヨーク、ロンドン、パリからプラハ、ダブリン、アムステルダム他の多くの都市に及んだ。
エアビーの最近の顕著な動きは多角化である。同社を「民泊仲介サイト」の会社と呼ぶのはもう不適切だ。
アリゾナでのUFO探索やケニアでのライオンの足跡を追うといったアクティビティ等を体験できる宿泊施設を200ヶ所用意している。
超豪華物件専門サイトも立ち上げた。ポリネシアの珊瑚礁の島や、フランスの古城に泊まるといった物件で、このサイトの物件の平均宿泊料は一週間で1.4万$(150万円)もする。
ホテルの部屋の売れ残りを直前に仕入れ、格安の値段で売る事に特化したサイト、ホテルトゥナイトを買収、さらに今、世界で最も勢いがあるホテル会社、インドのオヨにも大口出資した。エアビーはオンライン旅行代理店各社とも競合するようになった。
さらにレストラン予約の会社にも出資、航空会社のトップもヘッドハンティング、同社はフルサービス化を含めて旅行全般に関する新たな業態の会社となる可能性がある。
伝統的なホテル会社大手は、以前は自分たちはエアビーとは競合しないとしていたが、一部で対抗策を出し始めている。
世界最大のホテル会社であるマリオットは民泊ビジネスの「ホームズ&ビラ」を2000戸規模でスタートさせる。売りはマリオットという信頼の後ろ盾だ。エアビーがあまりに玉石混淆な状態である弱みをついて集客しようとしている。
エアビーは黒字体質であり、近い将来の上場も噂されている。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2019年9月2日号掲載