サイモン・プロパティはアメリカを代表するSCリートであり、時価総額は約500億$(5.3兆円)だ。企業規模を測る「時価総額」は株価によって算出されるのでその順位は株価により変わりうるが、同社は「世界最大の不動産会社」と言って良いだろう。世界で保有・運営・出資する各種のSCの数は325ヶ所以上だ。
日本とは異なり、アメリカでは完成後の保有を前提にリートが自ら開発することが許されている。外部から竣工済みの物件を買うよりも自ら開発した方が安く済み、株主のためになるという理屈だ。この点で、アメリカのリートは日本のリートよりも「デベ」に似ている。
前記以外で同社を日本のリートと比べた時に大きな違う点は、同社が個別物件の買収やSC保有企業の買収(M&A)を数多く行って来ていることだ。サイモン・プロパティは、非常に「肉食系」の会社なのだ。
ともに買収に失敗した例だが、超大型のものを二つあげてみよう。
一つ目はアメリカのSCリート第二位のジェネラル・グロース・プロパティーズ(現在のGGP)に対して試みた買収だ。2010年、サイモン・プロパティはGGPが破産法管財下にあった時に支配株の買収に乗り出したが、この時はカナダのブルックフィールドに奪われてしまった。ブルックフィールドは去年、GGPの残余の株を買って完全子会社している。
二つ目はアメリカのSCリート第三位のメイスリッチに対する買収だ。サイモン・プロパティは2015年にオファー、メイスリッチ側に拒絶され敵対的買収へと発展した。しかしサイモン・プロパティはこの時はあまり深追いせずに諦めている。いずれにせよ業界第一位の会社が第二位の会社と第三位の会社に対して買収を試みていた歴史があることになる。
オンライン通販の隆盛で、アメリカでも多くのSCが苦戦中だ。特に苦戦中なのは低所得者層が住む地区に立地するSCなのだが、サイモン・プロパティの物件は比較的、高所得者層が多い地区に立地するものが多いため、業界の中ではマシな方となっている。
百貨店のメイシーズやJCペニーといった核テナントが退出しても、これらの大型テナントの家賃は極端に安い場合が多く、小間割りして貸し出すとかえって儲かるというケースさえある。これは空室が多く歯抜けだらけのモール、いわゆる「ゾンビモール」では考えられない現象だ。
サイモン・プロパティは海外にも積極的に進出している。日本では三菱地所と組んで、各地で「プレミアム・アウトレット」シリーズを展開している。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2019年8月19日号掲載