「ウィン・リゾーツ」

 ウィン・リゾーツはアメリカを代表するカジノ会社の一つだ。

 

 ここではこの6月23日にオープンしたばかりである事業費26億$(2800億円)の大型カジノ、「アンコール・ボストン・ハーバー」関連に話を絞ろう。

 

 ウィン・リゾーツは2014年にマサチューセッツ州当局からカジノのライセンスの承認を得、このプロジェクトを2019年夏の開業を目標に、順調に建設工事等を進めていた。

 

 ところが2018年1月、ウォールストリート・ジャーナルが、同社の創業者CEOのスティーブ・ウィン氏が数十人の女性から同氏による性的不品行の犠牲者だとの訴えを受けているとすっぱ抜いた。折からアメリカではセクハラ追及の流れ、いわゆるミー・トゥ―運動が盛り上がっていた時期である。

 

 続いて、ホテルのネイルサロンのマニュキュアリストに対し、セックス問題に関連して750万$(8.2億円)というけた外れの額の和解金が払われていた事が公になった。この問題が和解に至る時期は、ボストンのカジノのライセンス審査の時期にもろに重なっている。

 

 アメリカではカジノ会社の経営者に組織犯罪の関係者や犯罪者が入っているとアウトだ。

 

 ウィン氏は先のマニュキュアリストに対して「犯罪行為」をしたために、その口止め料である和解金が超巨額になったのでは疑われた。ウィン氏が犯罪を行ったのであれば(犯罪者ならば)、カジノのライセンスは取り消される。ウィン氏はウィン・リゾーツを退任した。

 

 マニュキュアリストがなぜ、性的不品行と新カジノのライセンス取得を絡めるという大きな絵を描けたのかという点だが、裏で糸を引いていたと目されているのがウィン氏の離婚した妻である。彼女はウィンリゾートの大株主にして富豪、元の旦那を目いっぱい懲らしめようとしたのではないかという話な訳だが、これは憶測の域を出ていない。

 

 ウィン氏が去った後、残った経営陣に対し、ウィン氏の性的不品行問題に適切な対処を行っていたか、あるいはカジノ会社の経営者として適性があるか問われた。こちらは罰金だけで済み、カジノのライセンスは取り消されずに済んだ。決着したのは今年の5月である。

 

 直近、同社は大きな動きを2つしかけた。一つはオーストラリア最大のカジノ会社、クラウン・リゾーツの買収だ。これは煮詰まる前に話が漏れたとして、流れた。もう一つは問題のボストンの新カジノを同業のMGMへの売却する交渉をしようとしていたことだ。しかしこの話もメディアが報じた直後に「取り止める」とした。同社の動揺は収まっていない。

 

                      ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

週刊住宅 2019年7月15日号掲載