「インビテーション・ホームズ」

 アメリカにはあるが日本にはないという不動産ビジネスの代表格が、一戸建て住宅を非常に大きな規模で貸す貸家業である。多くの会社はリートとなっている。

 

 ブラックストーン系のインビテーション・ホームズがその最大手で、現在8万戸程度を所有している模様だ(動きの激しい業界なので数字はずれているかも知れない)。同社は2017年8月に業界大手のスターウッド・ウエイトポイントと合併し、所有戸数が急増した。

 

 アメリカも昔は今の日本と同様、戸建ての貸家業はパパ・ママなり個人富裕層が手掛けるビジネスだった。このような大規模一戸建て住宅レンタルビジネスが急に発達した理由は、近時の住宅市場の歴史を振り返るとわかる。

 

 アメリカの住宅価格は2008年のリーマン・ショック前から急落、2012年に大底を付けた。ブラックストーンはこの大底以前から戸建て住宅を賃貸用に買っていたが、この年に専門会社としてインビテーション・ホームズを設立、底値になった住宅を本格的に買い集めた。多くはモーゲージの差し押さえ流れだった住宅である。

 

 買い集めのペースは2013年が最大だ。週に1.5億$(1600億円)のペースで買っていた。先ほど「底値で買い集めた」と書いたが、「彼らが買い集めに入ったおかげで底が見えた」という面もある。

 

 買うのにあまり苦労はなかった。インビテーション・ホームズは「現金購入」という点で圧倒的に有利で、思うようにチェリー・ピッキングができた。

 

 2017年の新規上場当時、同社は48,431戸の取得に累計100億$(1.1兆円)を投資していた。一戸当たり平均2250万円になる。

 

 さらに入居者探しにも苦労しなかった。世の中にはサブプライム・ショックでモーゲージを差し押さられて自宅を手放した人が数多く存在、借り手はすぐに見つかったのだ。

 

 やがて住宅市場が回復、一戸建て住宅レンタル会社にとっては仕入れ価格が高くなってしまった。どの業界でも市場が成熟すると、M&Aが規模成長手段となる。冒頭に述べた合併もその流れだ。

 

 業界の明るい話としては、政府系金融機関であるファニーメイやフレディマックが一戸建て住宅レンタル向けの資金も取り扱ってくれるようになったことだ。両社の目的は「アフォーダブルな住宅の供給促進」だが、一戸建て賃貸住宅もこの一つとして認められたのだ。

 

                                             ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

週刊住宅 2019年5月20日号掲載