アマゾン、ニューヨークでの第二本社案、突然撤回とその状況整理

 アマゾンの第二本社予定地が昨年11月、238の候補地の中から最終的にニューヨークと北バージニアの二ヶ所で決定したはずだったのですが、ニューヨークについてアマゾンは急遽撤回してしまいました。ほぼ同時期に起きたベソスCEOの個人的な問題、二つも絡めてご報告いたします。なお北バージニアの方は順調に進んでいます。

 

 第二本社の予定地として選ばれていたのはニューヨークのロングアイランドシティ(クイーンズ区)と、バージニア州北部のクリスタルシティ(ワシントンD.C.に隣接)です。

 

 ところがニューヨークについて、地元のクイーンズで反対運動が起きてしまいました。 反対理由はいくつかあります。誘致条件として、州と市は合計で30億$(3,300億円)の税インセンティブをアマゾンに約束しましたが、反対派は同社のような超巨大会社にこのような巨額の税の優遇をするのは止め、そのようなお金があるなら直接、地元民のために使えと主張しました。

 

 進出が予定されている地域は比較的不動産価格が安いのですが、アマゾン進出で家賃が上昇しかねない、というのも反対理由にありました。

 

 さらに「顔認証の是非」や「アマゾンの労働環境の問題」という本件とは関係が薄いテーマまで、議論は一種のうねりのようになってしまいました。反対運動の中心的役割を果たしたのは地元選出の若手民主党議員で、彼女は「進歩派(左派)」に分類されます。

 

 このような中でアマゾンは突然、「やめた」と言ったわけです。ほかの都市なら大歓迎してくれるだろうに、こんな政治的議論に巻き込まれるようならいやだというわけでしょう。

 

 アンケートによればニューヨーク市民の70%はアマゾンの進出を支持しています。今回の撤回を惜しむ声も多く、また民主党の「中道派」の中には先にあげた「進歩派」の動きを快く思っていない人間も多数います。一時はこれをきっかけに民主党内の亀裂がさらに深まるとまで懸念されました。

 

 以上の話とほぼ同時期に起きたのがアマゾンのベソスCEOの超巨額の離婚と、タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」の親会社から同氏が受けた不倫に関する脅迫です。後者にはトランプ大統領のスキャンダルの問題も絡んでいます。

 

 本稿執筆時点では、アメリカではモラー特別検察官の報告書により大統領のロシア疑惑がヒートアップしています。ベソス氏は厳しいトランプ批判を続けている「ワシントン・ポスト」の社主であり、大統領選のどこかで同紙発の爆弾が出るかも知れません。

($=110円 2019年5月13日近辺のレート)

 

                                                                           ジャパン・トランスナショナル 代表 坪田 清