中国の国家統計局が発表する広範な統計数字のうちで、住宅市場を見る上で最も重要な統計は「70大中都市(新築)住宅価格指数」である。
この統計では文字通り、70の都市について住宅価格を指数化して月次で発表している。
中国には省や直轄市ほかが31あり、「70大中都市」には全国の省都クラスに加えて各省の第二、第三の都市も含まれている。人口が10倍の国なので、日本で言うと「七大都市」と「47都道府県庁所在地」の中間くらいの感じだ。
この指数を巡って、国家統計局が赤恥をかいた事があった。2011年1月の指数発表の場で、北京在住の外国人メディアが、数字がおかしいと指摘したのだ。
北京の70大中都市の指数を2004年にさかのぼって足し算すると価格上昇率は50%となるが、実際の市場ではどうみても倍になっているではないかというのである。
翌2月、国家統計局はこの指摘を認め、当面、この指数の発表を見合わせ、計算方法を再確認するとした。
指数の発表が再開されたのは4月分(5月発表)からである。
このような前科がある指数だが、これに基づき直近の中国の住宅市場の状況を述べよう。
北京、上海、広州、深圳のメガ4都市では住宅価格は横ばいになっていて、実感とあっている。横ばいでおさまっているのは2016年から導入された、強力な住宅市場規制による。当時の「住宅は住むための物であり投機のための物ではない」という習近平の有名な言葉はある時までことあるごとに唱えられていたのだが最近あまり使われることがなく、政策変更の可能性が取りざたされている。
それはさておき、これより下のクラスの都市では、住宅価格はかなり上昇している。70大中都市価格指数によれば概ね前年比で10%前後の上昇だが、いくつかの地方都市については実際の上昇率はこれよりもっと大きいという報道もある。
ここからが難しい。
先日も政府高官が「何度禁止しても統計のねつ造やウソがやまない」と嘆いていた。政府は建前としては住宅市場を抑え込むとしているのだが、現在、経済は不調でこの面では住宅市場が活況で価格が上昇していた方が好ましい。これに統計数字をまとめる各省のトップによる忖度や思惑も加わり、例により中国の話はよく訳が分からなくなるのだ。
ジャパン・トランスナショナル 坪田 清
週刊住宅 2019年4月29日号掲載