「神奈川価格」と「東京価格」の断裂線

 サラリーマン時代に都内から横浜に引っ越して十数年の間、神奈川価格と東京価格に差があることに気がついていなかった。買い物はカミさんの担当で、私は地元で買い物をすることがほとんどなかったからだ。

 

 退職して起業ののち、私は自分でも神奈川県内で買い物をするようになった。駅でいうと東急東横線の横浜側から「横浜、反町、白楽、妙蓮寺、菊名、大倉山、綱島、日吉、武蔵小杉」で買い物をしている。ただし頻度は大きく違う。

 

 そして駅により物価がかなり違うことに気が付いたわけだ。概ね、渋谷寄り(東京寄り)ほど高いのだが、単純なななめの線ではない。「神奈川価格」と「東京価格」にははっきりとした段差が存在する。

 

 私の発見では、二つの価格の断裂線は「菊名と大倉山の間」にある。横浜から菊名までが神奈川価格、となりの大倉山は神奈川県内なのにこの駅から渋谷側は東京価格なのだ。厳密に言えば菊名でも、駅構内の東急ストア菊名店だけは東京価格である。

 

 例えば妙蓮寺駅は神奈川価格圏内で、おでん販売専門店ではこんな値段で売られては、チェーンのコンビニさんはさぞ苦しいだろうなと同情する。やはり神奈川価格の菊名には竹細工屋さんや箪笥屋さんがあるがこれは今時、なかなか見かけない商売だと思う。もっとも中学校時代の同級生が代々木上原でつい最近までたたみ屋さんをやっていたので、この手の業種は意外と長生きするのかも知れない。

 

 一方、その菊名から一駅渋谷より(東京より)の大倉山では商店街にはなんとギリシャ風の店構えが並んでいる。町並み統一の苦労が忍ばれる感動ものの景色だ。どの店も価格は東京価格で、たい焼き屋さんも私が腕時計の電池を換えてもらったお店もおしゃれである。さらに東京に寄った日吉は慶応の学生さんに荒らされることが前提なのだろう、「チープ」なのだが、町の基幹的存在の日吉東急内は完全に東京価格だ。

 

 武蔵小杉は林立するタワーマンションに住む新住民(通称「ムサコ」)を意識した店と、昔ながらの店が混在している。前者の価格は下手をすれば東京より高い。後者は系統的には根岸線桜木町近くの「野毛」のジモティ向けの店と似た値段、即ち神奈川価格の中でもとりわけ安い。

 

 しかし後者の店のつもりで入った居酒屋がやたらに高かった(その代わり旨かった)こともあった。武蔵小杉はそんなに年がら年中行くわけではないのでどうでもよいののだが。

 

 「神奈川価格」と「東京価格」の断裂線、菊名と大倉山の間にあるのは(横浜の)環状2号線だ。この道路が本当に境界線なっているのかどうかは、まだ調べていない。