「ウニベイル・ロダムコ・ウエストフィールド」

 ともに金融系のオリジンを持つ不動産会社であったフランスのウニベイルとオランダのロダムコ・ヨーロッパは2007年に合併、ヨーロッパ最大の商業不動産会社であるウニベイル・ロダムコが誕生した。

 

 同社は2017年の暮れにオーストラリアのショッピングセンター最大手、ウエストフィールドのアメリカとイギリスを中心とした部門を248億$(2.8兆円)で買収し、その結果、現在のウニベイル・ロダムコ・ウエストフィールドという非常に長い社名となった。

 

 これに先立ち、ウエストフィールドは会社を「オーストラリアとニュージーランド部門」と「アメリカとイギリスを中心とした部門」に二分割していた。その後者がウニベイル・ロダムコに買収されたわけである。

 

 この合併により、同社はモール102ヶ所、オフィス13ヶ所、コンベンションセンター10ヶ所をヨーロッパとアメリカに保有する資産額620億$(6.9兆円)の商業不動産会社となった。ただし、合併に伴い生じたエリア的に重複する施設等、今後一部を売却する予定だ。

 

 同社は従前から保有していたSCも含めて、施設名称を「ウエストフィールド」へとリブランドしようとしている。この結果、ヨーロッパやアメリカのウエストフィールドという名称のSCと、オーストラリアやニュージーランドにあるウエストフィールドという名称のSCとは別の系統ということになり、少々混乱を呼びやすい状態が生まれる。

 

 ウエストフィールドが買収された時期は、SC等を中心に保有する大型商業不動産会社の売買の話が相次いだ時でもある。

 

 例えば不動産資産保有規模で世界一、二位を争うカナダのブルックフィールドはアメリカのSCリート第二位であるGGP(旧称ジェネラル・グロウス・プロパティーズ)の買収を完了した。

 イギリスのリートのハマーソンは商業不動産準大手のインツを買収しようとし、そのハマーソンはフランスのリート、クレピエールから買収オファーを受けた。しかしこれらの話は結局、ともに実らなかった。

 

 この時期は、オンライン通販や新手のディスカウンターからの脅威により、ショッピングセンター・ビジネスに対する悲観論が頂点だった時でもあり、これらのM&Aは下落した商業不動産会社株を「安過ぎる」と見た会社がそれを買う動きを見せたものとも言える。

 

                                            ジャパン・トランスナショナル 坪田 清

週刊住宅 2019年4月1日号掲載